私が天ぷらリストから外れて、シキくんが消滅から免れて一ヵ月と少し。
カケルさん曰く、かなりの甘えったれのシキくんは、今日も私の隣にいる。
相変わらず私は、シキくんの恋人でお姉さんで飼い主的な立ち位置のまま。
正直色々と思うところはあるけれど、今はそれでもいいかなと思っている。





ヴィジョン・ゴールド







「シキくん、お腹空かない?何かおやつ持ってこようか?」
「別にいらない」

休日の昼下がり。みんな出掛けちゃったから、シキくんと私でお留守番。一階のリビングに差し込む日差しが暖かい。
二人で何をするわけでもなく、ただ同じソファーにくっついて座っているだけ。あまりに暇なので、私は雑誌を見ている。
隣からピコピコとゲームの音がするから、シキくんは何かゲームをやってるんだろうな。

「ねぇ、シキくん」
「何?」
「そのゲーム、面白いの?」
「それなりに」

単調なゲームの電子音。彼曰くそれなりに面白いゲームに熱中しているのか、顔を上げようともしなかった。
シキくんと触れている左腕に感じる、重みと微かな温もり。好きな人と一緒にいられる幸せって、こういう時に感じるのかな?

(何だか眠くなってきちゃった……)

いつしか雑誌のページを捲る手は止まり、目蓋を閉じている時間が長くなってきている。
窓から入ってくる日差しがポカポカと暖かい。このままだと本当に寝てしまいそうだ。

(でも、せっかくシキくんが起きてるんだし…)

食玩とゲームとパソコンと寝る事が好きな夜行性のシキくん。そんな彼が昼間に起きてるだなんて珍しい。
今ここで寝てしまうのは勿体ない気がして、私は今にも閉じそうな目を必死に開けていた。





――バサッ

物音がしたから顔を上げた。

「………」

買ったばかりのゲーム。それなりに熱中していたのか、始めてからかなり時間がたっている。

「……?」

×××の足元には雑誌が落ちている。確か、さっき読んでいたやつだ。物音の正体はこれか。
手を伸ばせば届くんだけど、わざわざ拾ってやるのも面倒だ。読んでた雑誌落ちたぞって×××に言おうとしたんだけど――…

「…寝てるのか」

雑誌を読んでいたはずの×××がウトウトしてる。今にも頭がソファーの背もたれから落ちそうだ。

「…………」

そーっと×××の頭をずらして自分の肩に乗せる。本当は寝転がりたいけど、今はこれで我慢。
ゲームは一時中断。セーブをして電源を消す。眼鏡はめんどくさいからこのままでいい。
微妙に体を動かして収まりのいい体勢になると、×××のトクントクンっていう心臓の音が聞こえてきて一気に眠たくなった。

「……おやすみ」

いつも夢なんて見ないけど、今だけは×××の夢が見れたらいい。×××も俺の夢を見てればいい。





「ただいまー…って、あれ?」
「あ、サトルさん。おかえりなさい」
「メグルくん、何あれ?」
「起こすのも悪いかなと思って」
「ふーん」
「ただいまー!」
「わっ!ハルヒトさん、声が大きいですよ!」
「え?何?面白い事でもあるの?」
「面白いっていうよりも、微笑ましい事ですね」
「サトルが微笑ましいだなんて言うような事?メグ、説明しろー!」
「ハルヒトさん、静かに。リビングのソファーをそーっと見て下さい」
「…………し、しーちゃんが寝転がらずに寝てる!」
「そこ!?」
「しかも、しーちゃんが肩貸してる!」


――結局、×××とシキを起こしたのは一番最後に帰ってきたカケルだった。

「もうすぐ夕飯だ!二人ともさっさと起きろ!」



End.

−−−−−−−−−−
しーちゃんとヒロイン。悪魔ハウスの住人達に見守られながら、愛を育めばいいよ!



title by:悪魔とワルツを


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