ロベルトやシンシアの協力を得て、アルベルトさんを口説きに口説いて口説き落としたのはいいんだけど。
実はまだ、アルベルトさんの口から「好き」とか「付き合う」とか聞いたことが無い。何となくそういう関係ってだけ。

私の事、好きになってくれたんですか?

……なんて、怖くて聞けない。





愛して!マイラバー







「×××ちゃんにこんな思いさせるアルが心底憎い!」
「えぇー……」

小春日和のアルタリア城、茶飲みの会。会員は私とロベルトとシンシアの三人だ。最近の話題は、もっぱらアルベルトさんの事である。
私が二人にアルベルトさんに対する恋心を打ち明けて協力してもらったということもあり、この話題で盛り上がるのも当然なんだけど。

「要するに、×××は彼の愛が見えないって言いたいんでしょ?」

チョコチップ入りのスコーン片手に、シンシアがきっぱりと言う。

「だったら聞けばいいじゃない。私のこと好きですかって」
「それか、私と仕事どっちが好きなの!?って二択を迫るとか」

シンシアの発言にロベルトも乗っかった。いやいやいや。これでもアルベルトさんの愛は見えているし、その二択は重たすぎる。それに……

「仕事って言われたら立ち直れないから却下」

アルベルトさんなら普通に仕事って返しそうだ。もしくは物凄く真剣に考えてくれるだろう。それはそれで悪い気がする。
それに、ロベルトは知らないだろうけど、ロベルトに手を焼いている時のアルベルトさんって、何だかんだ言いつつも生き生きしてるんだよね。

「じゃあ、仕事じゃなくてロベルトは?」
「俺と?」
「そう。×××って答えれば愛が見えるし、ロベルトって答えても主人が大切なのねってことになるじゃない」
「それはそうだけど……」

シンシアの言うことも一理あると思う。でも、あまり尋ねたくない質問だ。理由は無いけど、何となく嫌だ。

「このまま悩んでいたって何も変わらないわよ」
「大丈夫だって。アルも絶対に×××ちゃんの事が好きだから」
「う、うん……」
「色よい返事じゃなかったら慰めてあげるし」
「泣きたくなったら、俺の胸、貸すよ?」

――二人とも、他人事だと思って楽しんでるでしょ。

と、思わず言いたくなった。でも、シンシアとロベルト、二人なりに心配してくれてるんだよね。……ありがとう。



――その晩。

シンシアから『×××、いけ!』と激励(?)のメールが届いた。何だかこの調子だと、完遂するまで言われそうだ。……仕方ない。
よし、努めて明るく冗談っぽく軽い感じでアルベルトさんに聞こう。どうしてそんな事を聞くのかと言われたら、包み隠さず訳を話そう。
道すがら(って距離でもないけど)話を切り出す練習をしながら彼の執務室に向かえば、アルベルトさんは中にいた。

「――アルベルトさん、今いいですか?」
「×××様?どうかしましたか?」
「えーっと、その、あのですねー……」

練習はまったく役に立たなかった。いろんなパターンの切り出し方を考えたはずなのに、頭の中から綺麗さっぱり消えている。
言葉を探したままの私を見兼ねたのか、アルベルトさんが助け船を出してくれた。

「そういえば、昼間は大変楽しそうにご歓談されていましたね」
「そ、そうなんです。予想以上に話が盛り上がっちゃって……」
「私としては、ロベルト様が女性の会話にああも自然に加われるのが不思議でなりませんが」

私も時々そう思う。――じゃなくて!

「ロベルトと言えば、その、アルベルトさん、は……」
「はい」
「私とロベルト、どっちが好きですか……?」


――言ってしまった。

呆れるのか、怒られるのか。彼の反応が怖くて私はアルベルトさんの顔が直視出来なかった。

「……一体、誰の入れ知恵なのやら。もしかしなくても、あのお二人でしょうね」
「う……」

弁解も言い訳もいらなかった。アルベルトさんは全てお見通しだった。

「とは言え、私にも非があります」
「え……」

ふわ、と穏やかな香りが私を包み込む。今までは微かに香る程度だった、あの香り。

「……比べる必要なんかありません」

アルベルトさんに、片腕でやんわりと抱き締められていた。こんなにも近づいたことなんて、今まであっただろうか。
ゼロに近い距離を実感した途端にかっと体が熱くなり、どくどくと全身が脈を打ち始めた。

「そもそも、×××様とロベルト様を同じ物差しで比べる事など出来ません」

空いているもう片方の手で、よしよしと頭を撫でられた。……これはこれで嬉しいんだけど、手のかかる子どもと同じ扱いじゃない?
もうちょっと、もうちょっとだけ、それらしく扱ってくれたっていいのに。

「……アルベルトさんの愛が見えません」
「では、どうしたら納得してくれますか?」
「ここでキスしてくれたら納得します」

こんな事を言ったところで、軽くかわされておしまいだろうけど。呆れられる前に、今度こそ冗談だと言って逃げよう。


――そう思っていたのに。


「……仕方ありませんね」
「!?」

不意に顎を掴まれ、くいと上を向かされる。濃いアンバーの色をした瞳に映る自分の姿。その一つ一つに私の心臓は破裂しそう。
しかし、私の心臓なんてお構いなしにアルベルトさんはそのまま音もなく近づいてきて――…



「む、む、む、無理です〜〜〜!!」

私が真っ赤になった顔で白旗を上げれば、アルベルトさんは至極真面目な顔で手を離した。

「今後おかしな質問はしないように」
「はい……」

あぁ、全戦全敗。惚れた者負けという言葉を、地でいってる気がする。

――でも、アルベルトさんの愛は見えた。


「部屋までお送りしましょう」
「ありがとうございます」

促されて一緒に部屋を出ると、小さな音を立てて執務室のドアが閉まった。廊下の窓から見える木々が、夜風で静かに揺れている。
誰も見ていないからいいよねと、彼の綺麗な指に自分の指をそっと絡めてみれば、柔らかく握り返してくれる。
……こういうのって、何だか嬉しいな。


「……この調子では、まだまだ時間が掛かりそうだ」
「アルベルトさん?何か言いましたか?」
「いえ、何も」


End.

−−−−−−−−−−
押せ押せだけどお子さまのヒロインと、一枚上手のアルベルトさんと、アルタリア茶飲みの会。
公式設定的にありなのか分からないけれど、このシンシア・ロベルト・ヒロインの三人組が好きです。



title by:ロストガーデン


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