Thanks for 2222hits 純奈様!!



それは、アルタリア城に届いた一通の郵便。

城門の守衛に直接渡されたという手紙にはただ一文、“未来のプリンセスは預かった。”とだけ書かれていた。
誰もが冗談だと思った。×××が他の王子達とロベルトを騙す為にこんな手紙を用意したのではないのか。ロベルト自身もそう思った。
しかし、虫の知らせと言うべきか。何となくロベルトは×××の声が聞きたくなって電話をかけた。

「…もしもし、×××ちゃん?」


“――ロベルト王子だな”


携帯電話から聞こえてきたのは、見知らぬ人間の声だった。





無敵のラバーボーイ







“女は預かった。刑務所に入れられているバルダッサーレを釈放しろ。それが女を返す条件だ”


それだけ伝えると、一方的に電話が切れた。


「アル、バルダッサーレというのは…」
「…はい。先日逮捕されたマフィアの元締めです」
「親分を解放する交換条件の為に彼女を誘拐したってことか…」
「バルダッサーレ率いる一味はマフィアの中でも危険視されている一味。ようやく治安も安定してきたというのに…」

アルベルトが眉間を押さえ、深いため息を吐く。ロベルトは一方的に切られた携帯電話をじっと見つめている。
彼女の身に危険が迫っている。今この瞬間彼女の身に何かあったら――

「…アル!今の通話から逆探知」
「その必要はありません」

背広の内ポケットから携帯電話を取り出すと、アルベルトはどこかに電話をかけ始めた。
何か話すわけでもなく、すぐに電話を切ると携帯電話を操作している。

「…下町の雑居ビルです」
「彼女の居場所が分かるのか!?」
「はい。×××様には発信器を着けてありますので」
「その事、まさか×××ちゃんは知らないとか…」
「×××様には伝えてあります。ロベルト様がいつ×××様を伴って姿を消すか分かりませんから」
「あ、そう……」

内心複雑なロベルトである。これから二人で城を抜け出す時は、彼女のボディチェックも行おう。
しかし今回ばかりは×××に発信器を持たせていて正解だった。既に居場所は特定出来ている。
あとはタイミングを見計らって彼女を救い出すだけ。

「…アル、場所を教えて」
「ロベルト様?」
「オレも行く」
「一体何を考えているんですか!」

アルベルトの一喝にもロベルトは怯まない。

「彼女を助けるのはオレの役目だから」
「そのお気持ちは重々承知しておりますが、我儘を言うのはお止め下さい。貴方は一国を担う身なんですよ」
「分かってる。…それでも、×××を助けたい」
「ロベルト様の双肩には×××様だけでなく、全てのアルタリア国民が乗っているんですよ!」
「好きな人ひとりすら守れなかったら、国なんて守れない!」

アルベルトを見据えるロベルト、その視線を受けて眉間に皺を寄せるアルベルト。執務室を重たい沈黙が包む。

「………わかりました」

折れたのはアルベルトの方だった。

「現場の指示は必ずお守り下さい。決してお一人で行こうとは思わないこと。あと…」
「…まだあるの?」
「私も一緒に参ります。重ね重ね申し上げますが、単独行動は慎むこと。よろしいですね?」



******



「もうバレたのか!?」
「あぁ。警察が…」
「くそっ!折角のチャンスだったのに!」


――部屋の中には二人の男がいた。


「王子の婚約者を攫えば、絶対に交換条件を飲むと思ったんだが…」
「この女は用済みだ!」
「交渉道具には使えるかもしれないが、逃げるには足手まといだな…」

二人の男が私を見た。ぞくりと背筋に冷たいものが流れる。――そのうちの一人の手に握られているものは、拳銃。


その銃口がゆっくりと私の方に向けられて――…



「……×××!」


大きな音を立てて、木製のドアが蹴破られた。


「…その手を下ろせ」

こんなにも低いロベルトの声なんて、今まで一度も聞いたこと無かった。
真っすぐに相手を見据える目は、いつものロベルトの目じゃなかった。強い強い、怒りの色が宿っている。

「一国の王子様が来るような場所じゃ…」
「…それがどうした」

ロベルトは一気に間合いを詰めると、男の手を蹴り上げた。その拍子に男の持っていた拳銃が飛んでいく。

「アル!」
「ロベルト様!あれほど単独行動は慎むようにと…!」
「…お説教は後で聞くから!」

アルベルトさんを先頭に、警察と思わしき人達が次々と部屋に雪崩れ込んでくる。
二人の男が拘束されるのを視界の端に捉えながらも、私は状況に頭がついていかなかった。

(助かった、の…?)

「……×××ちゃん」
「ロベルト…」

ロベルトが後ろ手に縛られていたロープを解いてくれる。手首に出来た赤いロープの後を見て、ロベルトは泣きそうな顔をした。

「怪我してない?何もされてない?」
「うん、大丈夫そう。街で買い物をしてたら道を聞かれて、そこから記憶が無くて…」
「そっか…。でも、無事で良かった。後から色々と聞かれると思うけど、ごめんね」
「ううん。気にしないで――」


大丈夫だよ。


そう言おうとしたのに言えなかった。


ロベルトの顔を見て安堵したのか、体が震えて止まらない。ぎゅっと自分で自分の体を抱き締めてみても、体は小さく震えたまま。
今は陽気な季節だというのに、寒気が止まらない。風邪をひいた時の悪寒の様な感覚が体中を襲う。

「どうしちゃったんだろ…変なの…」

笑おうにも、引きつったような乾いた笑いしか出てこない。もしあの時、ロベルトがドアを蹴破って入ってこなかったら。


今頃私は――…


「…大丈夫だよ。オレがいるから」

ロベルトは優しくそう言うと、震えが止まらない私の体をそっと抱き締めた。トクントクンと心臓の音が伝わってる。
あやすように背中をぽんぽんと軽く叩かれて、怖くない怖くないと呪文のように囁かれる。


――どれぐらいの間、そうしていたのだろうか。

「……ロベルト、ありがとう。落ち着いたみたい」
「そう?オレはもっとこうしていたいんだけどなぁ」
「もー、ロベルトったら…」

ふふっ、と自然に笑い声が出た。

「……やっと笑った」
「え?」

私の肩に頭を乗せると、ロベルトは小さく息を吐いた。

「…あの時、部屋に飛び込むのが一瞬遅かったらと思うと」
「うん…」
「×××が無事で本当に良かった。一人で生きていける自信なんて無いし」
「そんなこと…」
「あるよ。だからアイツら…」


――今すぐ八つ裂きにしてやりたいぐらいだ。


「……なんてね。もー、冗談だって。×××ちゃんはそんな顔しなくていいの」

いつものちょっとおどけた顔でロベルトは笑った。

「さ、帰ろっか」
「うん…」

ぎゅっと手を握られた。繋いだ手から伝わってくるのは、ロベルトの優しい体温で、私もその手を握り返した。

――怖かった。

本当に死んじゃうと思ったし、家族にも友達にも会えなくなるなんて嫌だ。…もちろん、ロベルトにも。


(ロベルトがいない生活なんて、もう考えられないんだよ)


そう、

私を誰より愛してくれる。


あなたは無敵の王子様。


End.

−−−−−−−−−−
ロベルトがヒロインを救出する話。やっぱりロベルト王子は難しい...
さすが王子様!というのを、前半のアルベルトさんとのやり取りに入れてみました。
Ay様、リクエストありがとうございました!





title by:ロストガーデン


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