AM10:11


ノーブル・ミッシェル城の図書室。午前中だけ開放してくれるとゼンさんから教えてもらった。
大学やシャルルの図書館ではテーマに合う文献を見つけられなかったので、これぞまさに渡りに船。
留学生としては、単位を落とすだなんて以ての外。あの人に知られたら、何を言われるか分からないし。

(えーと、あの本とこの本と、出来れば教授が言ってた資料も欲しいなー…)

走っちゃいけないと分かっているけれど、少しでも早く図書室に行きたくて、メモ用紙を片手に階段を駆け下りる。
一段飛ばしで階段を駆け下りても足音がしないあたり、さすがはノーブル・ミッシェル城の絨毯だ。

(ん?あれは……)


階段の踊り場に見える、長身の人影。……クロードさんとアルベルトさんだ。
そういえば、ゼンさんが今日は執事定例会が開かれると言っていたのを思い出した。

「――そうですね。この件に関しては私も掛け合ってみましょう」
「お手数をお掛けします」

この二人が一緒だなんて何だか珍しい光景。ウィルとロベルトが一緒にいるところはよく見るんだけど。
図書室に行くにはこの階段を使うしかないので、頭を下げて横を通り抜けようとしたその時。


「……わっ!」


ぐ、と後ろに引っ張られる感覚。靴のヒールが絨毯の継ぎ目に挟まった。
後ろに倒れるのを防ごうと、慌てて前のめりになったのが間違いだった。


落ちる――…


衝撃に備えてぎゅっと目をつむったが、訪れるはずの衝撃は来なかった。




「「大丈夫ですか?」」



何が起こったのか分からなかった。


ただ、二人の声があり得ない近さからステレオで聞こえてきた。


両側から二人に腕を取られ、落ちる一歩手前で助けられたという事実。
私がようやくそれに気づいた時、階段の踊り場には私と彼の二人しかいなかった。





Do you choose which of the Alberto and Claude



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