「男の子っていきなり背が伸びますわよね」


アジアの竹の子のようにニョキニョキと。何を思ったかディアナはそうつぶやいた。


「ほら、ウィーズリーズも前から数えたほうが早かったのに今は灯台みたいじゃないですか」


ウィーズリーの双子は入学当初背が低かった。それが13歳程になるとあれよあれよという間に背が伸び始めて、今はすっかり長身の部類だ。他の男子生徒たちも伸びている真っ盛りである。


「教授も背は高い方でしたの?」
「…小さくはなかったが高くもなかったな。卒業後に伸びた口だ」

小テストの採点をしながら、セブルスが返事をする。今はバインダー片手にソファに腰を下ろしているから低く見えるが、セブルスは背が高い。6フィートと1インチーー185pはあるんじゃなかろうか。それに黒い服を着ているから分かりづらいが筋肉が付きつつも痩せ型で、腰が細い。いつもセブルスを目で追っているディアナだからこその確信だった。
対してディアナは華奢で身長も高いわけではない。


「羨ましいですわ、わたしも身長が欲しい」
「男と女では体のつくりが違いますからな。エビのようでかわいらしいのでは?」


こちらの国で「エビのよう」とは「小さくてかわいいね」という揶揄いも含む。ディアナは唇を尖らせて、間にあるローテーブルを足先で小突く。振動が 向かいにいるセブルスにも伝わって手元が乱れるはずだったが、予期していたらしい 足を畳んだセブルスには何も効かない。口元に「ふふん」といった笑みが浮かんでいる。
拗ねたようにディアナがつぶやく。


「だって、届かないのだもの」


爪先立ちをしたって、あなたの唇には届かないではないか。
本棚のことだとおもったらしいセブルスは、「高いところにあるなら呼び寄せ呪文で十分だろう」と的外れなアドバイスをくれた。









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