03




ホグワーツへ出発の日、リビングでキスを送りあうマルフォイ夫妻の姿があった。

前回ダイアゴン横丁へ行った時、ナルシッサは「本を読むから」と家に残ったのだが、帰ってきたルシウスからギルデロイのサイン会の話を聞いて「なぜ連れて行ってくれなかったのか」と喧嘩になったのだ。
ルシウスは今までの寂しさが重なってキレるし、ドラコはヒステリックな母に驚いて固まっているし、ディアナは気分の乗らないデートで疲れてノータッチだったせいで、マルフォイ家の部屋1つがめちゃくちゃになり、ペットの孔雀の羽が半分ほど抜けた。
そのあと何やかんやあって、元鞘にもどってからはずーっとこうだった。



「本当にごめんなさい、あなたという人がいるのにわたしったら」
「ナルシッサ、愛に気付いてくれてわたしはとてもうれしい」

「先にキングズクロス駅に行きますわよー?」


毎年 駅の近くの建物に煙突飛行をして行くことになっているので、ディアナとドラコはいそいそと準備をした。
ディアナは忘れ物を取りに行くふりをしてリビングを出て、ドビーの姿を探した。今朝方も失敗をして、大きな耳を罰則のせいで赤く腫れあがらさせていた。少し探せば廊下の隅で泣いていた。
ハンカチを差し出しそうになるのを堪えて、ディアナは声をかける。


「ドビー?」

「お嬢さま…いってらっしゃいませ」
「ついてきたいのでしょう? 」


肯定なのだろう、悲しそうな瞳がぱちりと瞬いた。


「わたしの荷物が多くなってしまったの、ドビーが持っていってちょうだい」


今朝の一悶着は、今日の見送りに無理やり付いて行こうとしたドビーの画策がルシウスに見つかって、杖先で張り飛ばされたのだ。
ドビーは大きな目を溢れんばかりに見開いた。
ポエナがどこからともなく現れて、「お嬢さまのっ!荷物はわたしがっ!」と騒いでいたの他の用を言いつけると大人しく引き下がっていった。


「…お嬢さまにはすべてお見通しなのですね」
「さあ、何のことかしら。早く持ってちょうだい!遅れるわ!」








空いているコンパートメントに乗り込んで窓の外を見やると、両親は寄り添ってディアナに手を振った。あいにくドラコは友だちと他のコンパートメントに乗ってしまったのでディアナ1人が手を振り返す。
両親が仲がいいのはやはりいいものだ。これから学年を重ねるごとに帝王の影が色濃くなってくるのだから、といまの幸せを噛みしめる。
ドビーは上手いこと、ポッターたちを締め出すことが出来ただろうか。とその時、ドアがガラリと開いて「同席いいかい?他がいっぱいなんだ」と聞き覚えのある声がふってきた。
振り向くとエリックにこやかに佇んでいる。


「ご友人はよろしいの?」
「男ばかりより、ぼくは君とがいいな」
「わたしの友人たちが来るかもしれないのですけど」
「Ms.マークルたちかい? 違うコンパートメントにいたけど」


にっこり、とわらってエリックが向かいに座る。ディアナはドビーをここにも呼び出せばよかったとおもった。










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