09



時が経って、ディアナはホグワーツに入学した。
マルフォイ家ということで期待された通りにスリザリンに分けられた。際立って整った見目に、抜群の魔法のセンスもありディアナの周りには人が絶えなかった。





「マルフォイ家の深窓のご令嬢は大変ですな?」
「砂糖に群がるアリのよう、とは言いませんけどただの新入生に注目しすぎではありません?」


スリザリン寮監、セブルス・スネイプの研究室兼自室に逃げこんだディアナはため息をついた。
例の予知夢のこともあり 周りから隠すようにして育てられたディアナは、特にスリザリンの子どもたちから注目の的だった。


「人をスニジェットかなにかだとおもってるのかしら」
「…ドラゴンの間違いだろう」
「もう!折角 マクビティのクッキーを持参しましたのに」


目の前のチョコチップクッキーに目配せしてセブルスを睨め付けると、セブルスはしらを切りつつもディアナの前に紅茶のカップをおいた。
ちなみにスニジェットは絶滅危惧種になっている金色の小鳥である。スニッチの語源でもある。
ディアナは洗練された所作でアンティークのカップに口をつけた。



「でも皆好奇心で、ですわ。誰も怯えた顔をしていない…。教授、わたしになにか隠してることがあるでしょう?」
「Ms. …何でも話すような仲に、いつの間になったのかね」

「あら釣れない。ホグワーツの先生でもあるけど、わたしにとって兄のような存在だもの。浅からぬ縁というやつですわ」
「…腐れ縁だ」
「ひどい!」


ディアナは笑って、カップに口をつける。
淹れた茶を気に入ったらしいと踏んで、セブルスは目を逸らして小さく鼻を鳴らした。その素直じゃない様子に気付いて、ディアナはカップの陰でまた小さく笑う。


「魔法もたくさん勉強したわ。マルフォイ家の長女としてわたしには家族を守る義務と、恩人を助ける義務があるの」


いきなり何を言い出すのか とセブルスが訝しそうにディアナを見やる。
手入れの行き届いたさらさらとしたシルバーブロンドの髪に、まだ幼さの残るよく知った顔。強い意志をはらんだブルーエメラルドの瞳に セブルスの胸がズクリ、とかき乱される。


「あなたの力になる。約束するわ」



ディアナ・マルフォイは綺麗に微笑んだ。












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