04




ディアナは踏み台をもってきてベビーベッドですやすやと眠る弟を、蕩けたような瞳で見つめていた。
外人の赤ちゃんはかわいい。天使のようだと思う。美麗な両親の子どもなのだから、なおさらだった。…それはディアナ自身も、なのだけれど。

うっすらと生えたシルバーブロンドの髪、たまに開く目にはグレーの瞳。母の母乳をもらってふっくらしてきたやわらかな頬。
たまに抱っこさせてもらった時に香る 甘酸っぱい匂い。
産後2ヶ月ずっと通い詰めているが、ずっと見ていられる。あかちゃんってかわいい。


「そんなに見つめないでも、ドラコはどこにもいかないわ」


母がディアナの様子に苦笑いしている。
はーいと返事しながらもディアナがドラコに熱い視線を向けていると、ドアがノックされてルシウスとセブルスがはいってきた。


「ナルシッサ、おめでとう」
「ありがとうセブルス。ディアナの子守をしててくれたのよね、それについてもありがとう」

セブルスがはいってきた途端、ディアナは踏み台から飛び降りてセブルスの足に抱きついて花を飛ばしている。
ルシウスは複雑そうにそれを見ていた。


「ディアナ、おいで」
「やー!」


地味にショックをうけるルシウス。セブルスは複雑そうにしながらもディアナを抱き上げた。足に抱きつかれては動けない。


「…この子が予言の子でなくてよかった」


セブルスがドラコを見下ろしながら呟く。
それは7月末に生まれる子についての予言だった。この情報を仕入れてからというもの、彼らの主は今年生まれる子どもの情報にピリピリしている。
予定日は7月中旬ではあったが、お産の早まったドラコは予言から外れる。
ルシウスたちが主人に三度もあがらうなんてあり得ないことだったけれど、この夫妻はそれをひどく心配していた。


「ナルシッサ、セブルスと話していたのだが…ディアナの予知夢について」
「何か…? まさかあの方に知られてしまったの?」


顔色をなくしていく妻を、ルシウスは慌ててとどめた。


「いや、まだ気付かれてはいないだろう。今は7月末生まれの子どもを特定するのに忙しい…ロングボトム家とポッター家が有力だ」


大人の話をするから、と腕の中からディアナを下ろして セブルスがナルシッサを宥める。


「閉心術を教えようとおもう。この年齢では難しいかもしれないが、必要だろう。それに素質もある」
「あぁ…セブルス、あなたが?」


幼くして開花してしまったディアナの能力は、ナルシッサの実家であるブラック家に由来する。娘に重い能力を授けてしまった彼女はとても悩んでいたのだ。


「ディアナを よろしく頼むわ」
「…承知した」



大人たちが暗い顔をしているのは、闇の時代だからなのだ。ほんとに嫌な時代だ。それを感じ取っているディアナはベビーベッドの中の弟の手を守るように包み込んだ。












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