蝙蝠は林檎を食む r



「出掛けるのか?」

セブルスはニュースペーパーから顔をあげた。階下に降りてきたディアナに声をかける。
この頃はシンプルで洗練されたデザインのものばかり纏っていたというのに、最近ではあまり着なくなった色合いのワンピースだ。彼女の非常に整った容姿も相まって、目新しいその服もよく似合っている。
家ではいつも櫛を通すだけでいる髪も、今日は魔法でブローしたのか綺麗に整えられている。薄く化粧もしたのだろう。ワンピースとよく馴染んでみえるのは、その緑の深さがスリザリンカラーを思い起こさせるからだろうか。
スリザリンの女王様ーーと呼ばれていたのは教職員室にも聞こえていた。その人形のような端正な顔立ちと、寒色の髪と瞳、あとは格式高い家柄のせいで そのように見えたのだ。
あの頃より大人びたディアナが、こちらを向いて綺麗に笑った。


「いいえ、どこにも。
この間素敵なワンピースを購入したので」


袖を通したら顔や髪までセットしてしまったのだという。セブルスにはとんとわからないことだけれど、おしゃれとはそういうものなのだろう。
目の前を通り過ぎたディアナの後ろ姿を見送って、はた と そこに目がとまってしまって、呼び止めた。


「…動くな」


膝下丈のスカートの後ろが捲れて、太ももが見えていた。ヒップまでは見えていないが白く滑らかな肌が目に毒だ。そうとは知らないディアナがその声音にびくりと体を硬直させている間に、手を伸ばして直しておいた。
「呼び止められて 命拾いをしましたな」と嫌味を言いたくなる気持ちもわかってほしい。いつもなら軽口の応酬がはじまるのに 何も返ってこないことを不思議に思っているとディアナと目があった。少し潤んだ瞳、それは羞恥に染まっていた。


このワンピースを着たところを見せたかったのだとか、
澄ました顔をしていたのはそのせいだったのだとか、
そういう事を察してセブルスは目を閉じた。全く、この女はどこまでわたしを堕とせば気がすむのだろうか。
セブルスの嫌味が止んだことにディアナが訝んだ瞳を向けてくる。


「せ、セブルス…?」
「出掛けない と言いましたな? 午後の予定は?」
「あ りませんけど、」
「それは僥倖」


恥ずかしそうな顔から サッと不安げな顔になるディアナが気付いてしまう前に、途中からさらさら読む気のなかったニュースペーパーを置いて 抱き上げる。あっ、と声を上げ掛けたその口を口で塞いでおいて、セブルスは寝室へと足を向けた。それに気づいたディアナが口の端を結んで顔を赤くした。

そういうことになった。





キスで溺れさせ、呼吸のために背を向けたディアナの 頸のところにあるファスナーに歯を立てる。
ちゃり、という金属の擦れる音とともに ジーっとゆっくりそれを下ろしていく。目の前に現れた白い肌は 緊張のせいか期待からかしっとりと濡れていた。その甘やかな香りを堪能する。
昂りすぎて痛いくらいだ。今からここに、深く、触れに行くぞと 念を込めるように子宮のあたりを、腰を、掻き抱く。
ディアナはそれにびくりと背をそらせた。

「うう…おねがい、服だけでも綺麗に脱ぎたいのだけど?」


恨みがましくディアナが呻くので、杖を振って、脱がせたワンピースを少し離れたソファにかけた。
キャミソールから出た白い肩に噛みついてやる。甘いなき声にセブルスは口の端を釣り上げた。
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