素直になれない r

「なぜお前は大事なことを言わない」


あ、これはヤバイやつだな とディアナも理解した。全身真っ黒のセブルスが迫ってくると余計に迫力を感じる。知らずに後ずさっていたらしい。とうとう壁際へと追い詰められた。
壁に手をついたセブルスに捕らえられる。知っている、これ壁ドンっていうものだ。前世の知識が生きた瞬間である。惚れた男にこんな事されて、場違いだがときめいてしまって ほう、と開いた口から花が溢れでた。
麗しい紫の菫や しっとりと染まったアカツメクサ、優しい黄色の金鳳花。小さな春の花々がぱらぱらと落ちていく。ちなみに本当に口の中から溢れているわけではない。吐息が魔力のバグによって花になっているらしい。花吐き病、という奇病だった。


「病院には?」
「いいえ、忙しかったので」
「なぜ今日行かなかった」
「それは、」


貴方と会う約束をしたから、と素直に言えたならよかったけれど。お互い多忙すぎてすれ違う日々で、寂しすぎて発病しただなんて 言えるわけがなかった。きっと鼻であしらわれて終わりだ。こんなにも恋しかったというのにそれを否定されるのが怖くてディアナは口を噤んだ。
セブルスはその様子を見て一層眉間のシワを深めた。


「……無理に合わせんでもいい」
「え、」
「ドラコの破れぬ誓いのことか? それともルシウスの薬のことか。義理に思わなくていい、小娘の憐れみなんぞ要らん」

なにかを勘違いされている、それだけは分かった。
胸が痛くてディアナは言葉にならなかった。はらはらと口から花が溢れでる。それを見て堪らずに逃げようとするセブルスの腰に抱きつく。やめろと抵抗するセブルスを引き留めた。

「馬鹿なやつだ」

顎先をセブルスに乱暴に掴まれて、上を向かされる。押し殺したようなチョコレートボイスで囁いて耳輪を鋭く噛まれた。

「嫉妬に狂う小さな男だと嗤えばいい」





痛み、それすらも気持ちよくて嬌声を上げてしまう。セブルスは噛み付いた鎖骨を舌先でなぞった。骨ばった手のひらは確かめるように腰を撫でてくる。期待と羞恥と快感でディアナは膝を擦り合わせた。

「お嬢さまはとんだ阿婆擦れですな?」
「誰が教え込んだのかしら」

斬りつけるように投げかけられる言葉に、ディアナは喘ぎと花弁の隙間から言い返す。ああ、もう。ベッドの上は脱ぎ散らかした服と花で散らかっている。今 正に触れあっているはずなのに心は遠くて、ディアナはセブルスに手を伸ばした。
セブルスはその手をとってディアナを抱き寄せると、深く深く口付けた。口の端からどちらのものともつかない唾液が溢れでる。
空気が足りなくなってきて、ディアナの頭がぽやぽやしてくる。厚い舌で口腔内をなぞられると、もうそれだけで気持ちいい。背中にぞくぞくと快感が走って、弓形に反らせてしまう。過敏になってしまった その性感帯を大きな手で更に撫でられてしまえば、塞がれた口の中でディアナは悲鳴をあげた。

「んー! んんっ!」

腰を掻き抱くその手から逃れようとして、セブルスに体を身を寄せてしまう。彼の厚い胸板にディアナの胸はひしゃげ、下半身で主張している昂ぶりに媚びを売るように胎を擦り付ける。
瞑っていた目を開くと、ギラギラとした剣呑な瞳がこっちを見ていた。お前はわたしのものだと言われているようで、奥が疼く。
欲しかった体温なのに、触れて欲しかった手のひらなのに、何故こんなにも心が痛いのか。

「ふ、う…」
「、はっ」

ディアナをの吐息から生まれた花弁が、セブルスの口に入ってしまったようだった。セブルスは鼻で笑って それを吐き出し、乱暴に服を脱がせにかかった。
下着に手がかかり、ドロドロに溶けたそこに笑みを深くする。

「身体は正直ですな?」

心では誰を想っているのやら、と自分で言いかけて セブルスは傷付いた顔をした。なんて傲慢なんだろう。ディアナは言い返してやりたかったけど、嬌声と溢れてくる花のせいで上手く呼吸ができずに喘ぐしかない。
下着を剥ぎ取られてしまい、硬い昂ぶりの切っ先を充てがわれた。いつもと違ってスキンを被せる様子がない。


「まって、せぶ、ゴムつけて」
「逃げられないように孕んでしまえばいい」

よく濡れたそこは、難なくセブルスを受け入れた。やめて、と両手でセブルスの体を突っぱねるが、指を絡め取られ両手とも布団へと組み敷かれてしまう。セブルスが確かめるように見せつけるようにして腰を振ると、ぐちゃぐちゃと水音が響いた。悪い男がニヤリと口角を上げたのを滲んだ視界の中でとらえる。

「聞こえるか」
「やだ、あん、…あぅ、んっ」
「どの口が言うか、これだけ絡みついてきて」

寂しかっただけなのになぜこんなことを言われなければいけないのか。涙が溢れた。
それを見て興奮したのか、ディアナの中でセブルスが硬度を増す。質量も増したようで、随分と苦しかった。
ずりずり、と大きな硬いそれで中を引っ掻き回される。いやだ。哀しいのに気持ちが良くて腰が止まらない。
抱え込むようにして腰を打ち付けられる。余裕がなさそうな息遣いが愛しくて、セブルスの頭を抱き寄せた。汗が滴る髪の先がくすぐったい。律動に揺さぶられながらなんとか髪を撫で付けてやって、額にキスをした。

一番奥に打ち込まれる。痙攣する腰が射精を受け入れた。くたりと力を抜いたセブルスのせいで、ディアナに体重がかかる。更に腰が奥へと押し付けられる感覚に、ディアナは震えた。

「ひ、あ…!」

ぶわり、と花が目の前を覆う。目の前が真っ白になった。





「無事か」
「…なんとか」

花のせいで呼吸困難に陥っていたディアナを、セブルスが抱き起す。花を振り払って、ひいひいと呼吸を繰り返した。
そんなディアナの背中をおずおずと摩ってくれるのだが、今は呼吸の邪魔でしかない。ディアナは今度こそ突っぱねて拒絶した。


「…誰だ」
「何がですの」

聖マンゴのあいつか、それとも他の男か とセブルスが沈んだ声で呟く。

「ディゴリーって言ったらどうするんですの?」

意地悪でそう聞き返してやれば、セブルスは浅く息を吸い込んで項垂れた。
やり過ぎたか、と目を細めて ディアナは優しくその頭を抱き寄せた。

「言いたくなかったんだけど、セブルスが恋しくて発症したの。生娘じゃあるまいし こんなの言えるわけないじゃない」

発症してすぐに思い至ったそれに 馬鹿らしくて診察も受けずにいたのだ。会えたならきっとすぐに完治すると思って。
どんな顔をしてるのかしらと思って、おでこを合わせて顔色を伺うと 気まずそうに目を逸らされた。

「…なぜそれを言わない」
「だから 言えるわけないでしょう」
「ディゴリーは」
「冗談よ。意地悪言ってごめんなさい」


でも無理矢理の性行為は駄目だと思うの。
罰として、ディアナが苦しんで吐いた花たちは セブルスがマグル式で片付けました。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -