たまっていた話 r
久しぶりに開けたボトルのせいだろうか。身体が火照る。意識がとろりとしていて深く物事を考えられないでいる。なによりも、胎の奥がずくりと欲しがっている。欲しい、ほしい、ホシイ。
セブルスの首もと、色白い肌が目に映る。
ディアナは抑えきれずに自身の唇をちろりと舐めた。
「なんとまぁ、大胆ですな?」
「ハニーはなかなか奥手ですもの、わたしから行かないとでしょ?」
ぎしり、スプリングが鳴る。
仰向けになり、軽く上半身を浮かせているセブルスの腰の上に ディアナはまたがっていた。
ぴくりとディアナが組み敷いた雄が反応する。反応してくれた。いつも仏頂面で、同衾しても、足を擦り寄せても顔色ひとつ変えずにいた セブルスが。ディアナはふふ と微笑んで、銀糸の髪を耳に掻き上げる。弧を描いたまま、肌けた胸板に口付けた。
「すまなかった」
貪るように求めあった後、セブルスはぽつりと呟いた。ディアナはというと上がっていた息も収まり、我に返ったことによる羞恥で頭までシーツを被ってしまっている。
「……。」
「お前が何か思い悩んでいるのはわかっていた。こういう手しか浮かばなかったのは 申し訳なく思っている」
「ううう 杏蘇薬ね…?」
気だるいのは事後だからか。食前酒にハーブ酒なんて飲むんじゃなかった、とディアナは心底悔やむ。薬を混ぜられても気が付かなかった。
杏蘇薬とは漢方に近いもので 気の塞ぎを晴らす、というかアグレッシブにするというか。それを魔法薬学のプロが煎じれば、効果は絶大であった。
「ああ 神さま」
「…悪かった、そこまで思い悩んでいたとは。これからは触れ合う時間をつくろう」
「セブ、勘違いしてない?」
シーツからじとり とブルーエメラルドの瞳が睨め付けてくる。
「そんな気も起きないくらい、わたしに魅力がなくなったのかと」
思ったの、という言葉はもにょもにょとしりすぼみになっていった。それには最初はきょとんとしていたセブルスの口角がじわじわと上がっていく。
「馬鹿か」
「貴方がインポテンツじゃなくて安心したわ」
「…もう黙れ」
減らず口に苦笑して、セブルスがキスでディアナの口を閉ざす。ディアナが視線を向ければ 照れたように外されたので、つまりこういうことなのだろうか。『大切すぎて手が出せなかった』
「執着も行き過ぎればどうかと思いますわよ…」
「…善処する」
擦り寄せた足に、セブルスの骨っぽい足が絡む。あたたかい夜だった。