瞳子監督から入院先を教えてもらって病室を訪ねた。

難しいと言われていた手術は奇跡的にとてもうまくいったらしいが、
手術後はずっと眠り続けている…そう聞いた瞬間、いてもたってもいられなくなった。


いやな動悸をどうにかおさえ、ひんやりと冷たい病室のドアを開けるとそこは全体的に白い空間で、
窓から少し離れた壁際にベッドは置かれていた。

「佐久間…」


近付いて、眠る佐久間を見つめる。
少し痩せただろうか、もともと細い体は更に頼りなく、体のあちこちに巻かれた包帯と腕に刺さる点滴の針がとても痛々しくて。
予想していたよりも遥かに痛ましいその姿に、思わず眉間に皺が寄った。
消えてしまいそうな呼吸は本当に弱々しく、いつもしているアイパッチは外されていた。
あれは破れてしまっていたし、どうせ新しいものが必要なのだろう…
そんな事を思いながら、何故こんなことになる前に何も出来なかったのか、
こうなる前に何故助ける事ができなかったのかと、自分に足りない何かを呪った。

入院中の佐久間を見るのは初めてではないけれど、
今回は状況がだいぶ違う。

生きているのが不思議だと。
そう聞かされた瞬間の心臓が凍り付いたような感覚はまだ生々しく
オレの中に鮮やかにのこっている。

いくらでも方法はあったはずなのに
自分の気の回らなさに殺意すらわいた。

確かに四国へ向かったというその日の数日前、少しだけ様子がおかしかった。
あんな危険なところへ行くなんて

もっと気にかけるべきだった。佐久間はそういう事をあまり自分から話さないから
真面目で頑張り屋で、どこか自分をおさえて…
だからオレが気付いて助けないと
だめ、だったのに


「ごめんな…」



本当にごめん。


せめてできる限りの時間そばにいたい。今はそれくらいしか思い浮かばない。

日が暮れる。
佐久間との時間がおわる。

橙に染まる部屋はまるで誰かの涙みたいだった






引き抜ける章までもやもやして大変だった
思い出すともやもやする



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