アジア地区予選2戦目。
相手は中東の国カタールの刺客、デザートライオン。

代表には選ばれなかったものの、一緒に練習をする仲になっていた元・代表候補のメンバーは、
皆で集まり試合を観戦しに来ていた。

結果は暑さと相手のスタミナに苦戦を強いられながらも、
見事イナズマジャパンの勝利に終わった。


試合を観てそれぞれに思うものがあり、
今日は個人で特訓をしようという事に決まり。
佐久間はなんとなく、いつも円堂が特訓している鉄塔広場に行きたいな…と、そう思っていた。


「佐久間!どこかに行くのか?帝国も…
確か家の方向もそっちじゃねえよな?」

目的地へ足を向けようとすると後ろから声をかけられる。
先程「今日も河川敷でガンガンに特訓してやるぜ!」
と意気込んでいた染岡だった。


「染岡…いや、今日は少し寄りたいところがあるんだ。」

「そっちの方向…もしかして鉄塔広場か?」


「ああ。ちょっとな。」


いかつい顔の友人がピンク色の頭を傾けてうーん、とか、んーとか、
オレの返事を聞いてから少し考えるような素振りをみせて唸ってる。

「…よし!じゃあ俺もついて行くぜ!」

「え…?」

「あ、いや、一人の時間をジャマしようとかってんじゃねえんだ。
あの辺最近ガラの悪い連中が結構多くてよ。」

少し照れたような苦いものを食べた時のような表情を見せて、再び染岡は視線を横に流す。
染岡は優しい。ある程度接した事のある人間であれば皆知っているだろう。


「そうなのか…」

確かにあまりそう言った連中と関わるのは得意ではない。
少し一人で円堂を想っていたかったのだが、ここは素直に受けとらせてもらうのがいいのかもしれない。

「わかった、じゃあ…」

「円堂がよ、」

「うん?」

「いや、何でもねえ…円堂がいないあいだにお前に何かあったらアイツに顔向けできねえからな。
円堂は俺にとって大事な仲間で、友達なんだ。だからよ…」

「ありがとう。」

一緒に行くと言われた時は何事かと思ったが、どうやら自分が危険な目に遭わないようにと気を利かせてくれているのだという事がわかり。
佐久間は少し不器用だけど優しい友人に感謝をした。




「円堂がよ、お前のこと見た時に言ってたんだぜ。」

「円堂が?」


自分の知らない、雷門での円堂の話。
ひとつまたひとつと聞く度になんというかすごくわくわくして、たまらなく胸がドキドキした。
思えば彼は自分よりも円堂との付き合いは長いのだ。
もっと聞きたい。そう思っていっぱい話していたらあっという間に陽は落ちて、
気がつけば辺り一面深い茜色に染まっていた。


「…おっと。オレはそろそろ特訓に行くぜ。今日は治安もいいみたいだしな。
暗くなると危ないから早めに帰るんだぜ。」

「ああ…長く話してしまってすまない。今日はありがとう。」

気にすんな!
そう言って走って行く友人に手をふりつつ、
なんだか無性に会いたくなってくる。やっぱり会いたい。

「円堂…」





「あれ?佐久間?!」

「!!」


遠ざかる染岡の足音とすれ違う形で少し長めの階段を上ってくる足音の主…
それはまさしく今最も逢いたかった相手のもので。

「円堂…!」

思わず駆け寄って抱きつきたくなったのだが
驚きと嬉しさと、よくわからない何かがジャマをして、足がすくんで動けなくなってしまっていた。

「ついさっきそこで染岡に会ってさ、『試合の御褒美が待ってるぜ!』
って言うから何のことかと思ったけど」

一歩二歩と、距離が縮まる度に心臓がドキドキした。
どんどん距離が縮まって、真正面に来られた時

夕陽に照らされたその勝利者の顔に
何故だか泣きたくなってしまった。


「円堂…2回戦突破、おめでとう。」


「ああ。ありがとう…」

あったかい手に両肩が優しく包まれたかと思ったら、
ギュッ…と抱き締められる。

「円堂…」

円堂の背中に腕を回して抱き締め返すと、更に距離を縮められたような気持ちになって。
とても幸せだった。

「どうしたんだよ、そんなに泣いて…」

「なんでも、ない」

「そっか…」

そこからは黙って何も言わずに頭を撫でてくれる手に
今だけは甘えていたかった









おまけ。


『俺がいない間は佐久間を頼む!』


ちょうどこんな夕焼けの日、
ヤツの怖いくらいに真剣なまなざしを受けた時の事を思い出す。

大事にされているみたいで本当によかった。
しかも本気で信頼できる男に。

佐久間の事は選手としての境遇が似たライバルとしてずっと見て来たけど、
その運命は端から見てもとても壮絶なものだった。
佐久間には絶対幸せになってほしい。


「ま、相手が円堂なら間違いはねぇだろうよ、」

そしていつの間にか
「妹がいたらこんな感じなんだろうか…」


そう思ってしまっている自分がいて、
あわてて頭を振って夕焼けに染まる鉄塔広場を後にした。










染岡さんの2での佐久間に対するリアクションに胸がアツくなって、
ヤツになら安心して佐久間を預けておけるなあと思ってます。
私も、円堂さんも。
染岡さん好きだー。

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