本気のきもち

「僕君のことが好きみたいなんだ」
さらっと流すように言われた。あの告白から2週間、綾時はいたって普通。普段とまったく変わらず、今日も隣を歩いてる。
「それでね、」
歩きながら一方的にしゃべりまくるのはいつもとおなじ。
女の子が通れば目をきらっきらさせて視線を送るのもおなじ。
「ね、今日キミの部屋に寄ってもいいかな?」
そうやって、僕の部屋に遊びに来るのもいつもとおなじ。
ひとりで告白を気にしているのがなんだかバカらしくなってくる。
そういえば、綾時は好きみたいといっていた、それって好きじゃないかもしれないってことだ。
あー、どうしてこんなに僕がぐるぐる考えなくちゃならないんだ、それもこれも綾時のせいだ。そういうことにしておこう。
部屋に来てからも綾時のはなしは衰えることなく、一方的に続いている。
「飲みもの買ってくるけど、綾時何飲む?」
その言葉に一瞬静かになり、次にはうーんと唸りだしキミと一緒でいいよ。と返ってきた。
廊下に出て自販機で飲みものを買い、ちょうど帰ってきた真田先輩と少し立ち話をして部屋に戻った。
……?
なんだか、綾時の様子が変だった。
すごい顔で僕のほうを見ている。
飲みものを渡しながら、どうかしたのか聞くと俯いてしまった。へんなの。
「……いっつも、……なの?」
聞こえるか聞こえないくらいの言葉でぼそっと呟いたかと思ったら、今度は駄々をこねだした。
「どーしてっ、僕だってしたいのに!!!」
「は?」
綾時の意図がつかめずに首をかしげる。
「しかも、あんな笑顔まで見せて!」
余計に訳がわからない。
「落ち着け綾時、わかるように話して。」
その言葉に我に返ったのか大きく深呼吸をして話し出した。
どうやら、真田先輩が去り際に頭を撫でていったのが気に喰わなかったらしい。
それを僕が嬉しそうにしていたのがさらに気に喰わなかったらしい。
・・・そんな嬉しそうにした覚えはないが。
「はぁー」
「・・・・・・」
むーっと少し拗ねた顔で綾時がまたさらっといった。
「僕、この前キミに好きっていったのに、酷いよ。」
「・・・あれ、本気だったんだ、でも綾時は・・・好きじゃなくて好き・・・みたいって言ってた。」
「えっ、えっ!僕そんな風に言ってた?」
コクリと頷いてやる。
「わわっ、ご、ごめんね、ごめんね、違うよホントに好きなんだよ!」
「・・・・・・どーでもいい。」
わーごめんね、と泣きそうになりながら綾時が抱きついてきた。
「ちょっ、綾時苦しいはなせ。」
「・・・やだっ、好きっていってくれるまで離さない。」
まったく話が噛み合わなくなっている。
しばらく暴走の止まりそうにない綾時に言ってやった。
「だったら、ずっと離すなよ・・・。」

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