始まりの一瞬に想いをこめて

「ふぁ〜」あくびをひとつ。
「眠いのか?」と聞かれてふるふると頭を横にふった。
ほんとうは、眠くて眠くてしかたない。
でも、あともう少しだけ…。
今日は大晦日、年末年始はクラブハウスの設備の使用を全て断ってしまうため暖房もシャワーも使えない。
だから達海さんはホテルに泊まってくださいね!と強引に有里が俺にホテルに泊まれと言ってきた。
それを聞いてた後藤が「だったら俺の家に連れて行くよ」と名目上、今決めたことのように言った。
もちろん最初から俺は後藤の家に行くつもりだったし、後藤も俺を連れて帰ってくれるつもりだった。
「でもホテルもう取っちゃいましたし、今からだとキャンセル料も…」
「いいよその辺は俺が連絡しとくから。」後藤がそう言えば目を輝かせて大げさにありがとう後藤さん!と有里が言う。
自分のことだけど他人事のように「はやく帰ろうゴトー俺はらへったー」
と言えば「達海さん、後藤さんにくれっぐれも迷惑かけないようにお願いしますね!」ってすごい顔で念を押された。
そんなのわかってるって。それに後藤は迷惑なんて思わないし。
後藤の家につくと最初に風呂を沸かす。
これはゴトーの日課だ。 現役ん時からかわってない。
シャワーだけの時もあるけど疲れた時は風呂につかるのが一番だと爺くさい事を言ってた。
俺は別にシャワーだけでもかまわないけど。
後藤が準備してる間俺はテレビみたり冷蔵庫を漁ったり。
リビングとキッチンを行ったり来たり。ついでにキッチンに置いてあった今日食う予定のオードブルをちょっとつまんだ。
「うん、けっこううまいじゃん」
ドクペを取りだしゴトーにもなんか飲むかきく。
「ビール」
と一言だけ返ってくる。 ドクペとビールをテーブルに置きまたテレビのリモコンをいじる。
どこも特別番組でいっぱいだ。 いまいち面白いものがない。
――プチン 
テレビを消すと、一気にドクペを飲む。
その間にゴトーも戻ってきてビールを開ける。
カツン と缶と缶を合わせて乾杯する。
お疲れ様とつかれた顔をしながら言うゴトーの横に移動すれば、どうした?と頭を撫でてくれる。
俺だって甘えたいときくらいある。でも口にだしてやんないけど。
撫でてもらえるのが気持ちよくて頭をゴトーの肩に預けた。
しばらくその感触を味わえばコトンと缶を置く音が聞こえた。
ゴトーが頭を撫でていた手を俺の頬にすべらせてきた。
「ゴトー?」
と名前を呼びながら見上げれば、ふわりと微笑むから俺の心臓が跳ねた。
気づけば唇をふさがれていた。
「んっ」
こうして二人きりになるのはいつぶりだろうか。
頭の片隅で考える。余裕ありそうな顔をしてる後藤とは反対に緊張している自分に気づいてちょっとおもしろくない。
その間にうっすらと開いた唇から遠慮なしにゴトーの舌がはいってくる。
くちゅくちゅ
耳からはいってくる水音が脳に背中に腰に刺激をもたらす。
舌を吸い上げられて思わず腰が揺れる。
「ふッ…んっ…ごと…」
俺も負けじと舌で応戦する。くちゅくちゅとさらにおおきな水音をたてて。
口の端からこぼれる唾液も吸い取られさらに激しく貪りあう。
あまりに後藤が激しいので喰われるかと思うほど。そんな後藤に俺も夢中になった。
気づけば、床に押し倒されていた。
ひさびさに見るゴトーの雄の顔に、ズクンと腰に痺れがはしる。
期待がふくらむ。
ほしい。ほしい。ゴトーがほしい。
腕を伸ばして首に絡め後藤の目を見つめる。
「シたい、いっぱいシたい。ねーゴトー」
「俺も、達海…」
擦れた声が耳元で響いてゾクリと身体が粟立った。
意味がないとわかっていたけど 風呂は?ときけば、返ってきた言葉はもちろん予想してた言葉。
「待てねぇーよ」
そのあと我慢の限界というように後藤は俺のありとあらゆる箇所に触れまくった。
べたべたべたべた。余すところなく。
もちろん俺も負けずに後藤に触れまくった。
ひさびさの後藤の体温と匂いにくらくらとめまいがする。
感じすぎておかしくなるほどに。
その後、風呂で、もういっかい。
今度は獣みたいな後藤じゃなくやさしく丁寧に触れてくれた。
オードブルをつまみ一緒にビールを飲むころには大晦日も終わりに近づいてきた。
俺はこたつの中でうとうと。
眠いのか?と聞かれてふるふると頭を横にふった。
あと10分、あと5分・・・
俺は眠いのを我慢して瞼が閉じないように頑張る。
あと1分。
ここまでくればもういいだろう。
後藤の目の前まで行って0分。除夜の鐘の音を聞きつつ後藤に口づけた。
俺の行動を察したのかふわりと抱きしめて優しくキスに応じてくれる。今度は触れるだけのキス。
「今年もよろしくね、ゴトー…」
「ああ、今年もよろしく達海…」
おれは後藤の腕の中で眠りについた。
「ったく可愛いことしやがって・・・」
その呟きは俺には届かなかった。かわりに額に暖かいものが落ちてきた。

〜A HAPPY NEW YEAR〜

始まりの一瞬に想いをこめて

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