俺だけがしってれば

とくべつすることがなくて、ぼんやりと練習後に世良と赤崎が言ってた事を思い出してた。
それも、なんとなくだ。いや、ほんとはめちゃめちゃ考えていっぱい思い出してた。

『後藤さんって男から見てもかっこいいよな。なぁー赤崎。』
『まぁ、そうっスね。俺と同じくらいにはカッコいいんじゃないっスか。』
そんな会話が耳にはいってきた。ゴトーが?そうか?そうでもないとおもうぞ。
なんて考えてたら俺に気づいた世良が勢いよく近づいてきた。思わず逃げ腰になる。
『監督っ!やっぱり後藤さんって現役時代もモテてたんっスか?』
きゅうに俺にふってくるもんだから一瞬反応できなくて、それを勝手に肯定だと決めつけられた。
『あっ、その反応は現役時代もモテてたんっスね!』
うわぁーさすがだなー後藤さん。って目を輝かせてる。
現役時代も、ってなんだ。も、って。
別に今だってモテてないだろ?あんな40手前のおっさん。
しかもゴトーなんて頑固だし、すぐキレるし、おせっかいだし、俺にすっごく甘いし、すっごく優しい……あれ?
『さあ、わかんない。』
俺の思考がおかしな方向へ向かいだしたから、とりあえずごまかしといた。
『えええ監督しらないんっスかっ!』
世良が大げさに言う。
じゃあこれは知ってますか。
『サポーター達の中に密かに後藤さんのファンクラブ、あるらしいっスよ。』
赤崎が言った。えっそれは初耳。それに続いて世良が俺達現役選手にもそんなのないのに。ってわめきだしたから、これ以上うるさいのは勘弁してくれと早々に部屋にもどった。

「ファンクラブねぇー」
なんとなくさっきから胸のあたりがモヤモヤしてる。
なんだよこれ。もう。
よく現役時代に罹った症状。確かシットってやつだ。
このモヤモヤを治せるのは何故か張本人のゴトーだけ。
そんなこと考えてたらなんだか、腹の下あたりがムズムズしてきた。
ハアー、そんな自分に少し呆れる。簡単に言えば今日はいつもよりゴトーの事考えてたから恋しくなったってやつ。
さらにシットも混じれば、いいように煽られいますぐにでもゴトーに触れたくなる。
そしてこんな時に限ってタイミング良く現れるのがゴトーだ。
コンコンとドアがノックされ、達海と呼ぶ声が聞こえる。
「あいてるよー」
慌てて今の今までベッドに横になってました。って風をよそおう。
なんとなく今ゴトーに会うのは気恥ずかしかったから。
「わりぃ寝てたか?」
「んーいや。横になってただけ」
「そうか。」
「…もう、帰んの?」
「ああ、帰る前にほら朝飯買っといた。朝起きたらちゃんと食えよ」
「…‥うん。さんきゅー」
顔をあわせずらい。俺たぶん今ものすごく恥ずかしい顔してるから。
きっと耳まで真っ赤になってるはず。
「どうした?達海、どっか具合悪いのか?」
ほら、こんな時に限ってするどい。普段はこれでもかってくらいにぶいくせに。
だからゴトーなんてカッコよくもなんともないんだぞ世良、赤崎。
でもそんなことは俺だけが知ってればいいの。
お前たちには教えてやらないしゴトーのサポーターってのにも…教えてなんかやんない。
後藤が俺の前だけで見せる顔はこれからも俺だけが知ってればいいの。
「ゴトー」
名前を呼んで、そばに寄ってきたゴトーの首に腕を回して引き寄せ強引に口づける。
一瞬目を見開いたゴトーだったけど、すぐにいつものように噛みつくようなキスをしてくれる。
「ン、んん」
「達海…」
「ハァ、…ゴトー、ンっ」
ちゅくちゅくといやらしい水音が俺の部屋にひびいてる。
がっついてる自覚はあるけど今はそれどころじゃない。一秒たりとも離したくない。
俺だけが煽られてるなんて悔しいからゴトーも、煽られればいい。
2人っきりの時にしか見せない熱の籠った顔でゴトーに見つめられた。どうやらそんな心配は不要だったみたいだ。
だから俺もゴトーにしか見せない顔で耳打ちする。
「今日お前んち連れてって、そんでめちゃくちゃにして。」



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