無神経なキミの戯言(ナツジノ)

ナッツが風邪をひいた。こともあろうか何故か僕の部屋に転がり込んできた。意味がわからない。
「…頼むよジーノ」
弱々しい頼みにわざとらしく盛大なため息をついてみせる。
いつもの威勢の良さは微塵も感じられない。そうとう酷いのだろう。
止むを得ずベッドへ寝かせてやると安心したかのように彼は眠りについた。
「さて、僕はどこで寝たらいいんだい?」
チラリと眠っているナッツに視線を向け、もう一度ため息をつく。
そういえば何日か前に奥さんと子供が実家へ帰省中だと言っていたのを思い出す。
「ほんと、ナッツって無神経」
ベッドの脇に腰をおろして呟いた。
「…どうして僕のところになんか来たんだい、」
そっと額の汗を拭きとってやる。
なぜ、僕がこんなことをしているのか。
どうしてほっておけないのか。
そんなものは、考えなくてもこの胸の痛みがおしえてくれる。
「しかたない」
今日1日くらいはソファーで寝てあげても文句は言わないでいてあげるよ。
ベッドから腰を上げそっとその場をはなれようとした。
「えっ」
ふいにワイシャツの裾を握られる。
「ナッツ・・・?」
返事はなかった。いまだ眠ったままだ、無意識なのだろう。
皺になりそうなほどの強い力で握られている。
「まったく、僕にどうしろと」
そんな強い力で、まるで――いかないでくれ――とでも言ってるかのような。
いったい誰と勘違いしているのだろう。
いや、そんなものは痛いほどわかっている。
美しくはないけれど一発殴ってもバチはあたらないだろう。
だけど、それを実行にうつすことは出来なかった。
彼から漏れたうわごとに僕の顔が紅潮するのはしかたがない。
これもすべて、
―――幸せそうに、僕の名前を呼ぶキミが悪いんだよ。ナッツ。

***

とりあえず両片想い的なナツジノ。

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