暑さのせい

「明日の昼と夜と、それと今日の分も」
ぶつぶつ言いながらタツミが買い物かごへ次々とアイスやらお菓子を放っている。
なんだ、なんだいったいそんなに大量に甘いものいつ食うんだよ。
見てるだけで胸やけしそうになる。
「いったいどんだけ食うんだタツミ。少しはちゃんとした飯も食えよ。」
「だってーあちぃーじゃん。」
そりゃこの猛暑続きの夏じゃアイスを食いたくなるのはまぁ俺でもわかる、でもなぁ。
「お菓子は暑いとか関係ねぇーだろ」
「だって甘いもん食わないと俺ダメだもん。」
もんじゃねぇーよ、いい年したおっさんが。
とはいえそんな姿も可愛いと思ってしまう自分は末期だ。
「どうせ今日は俺の家にくるんだから少しはセーブしろ。」
たしかまだタツミ用のアイスやらドクターぺッパー、お菓子もストックがあったはずだ。
「違う違うこれはクラブハウスに置いとくの!」
「はぁ?それを今買うのか?」
「うん!何、ダメなの?」
ジトーっと見つめてくるタツミに一瞬怯む。
いやいや絆されたらダメだ、母親が小さい子供と一緒に買い物に来てる気分ってこんな感じなんだろうか。
「ダメじゃないけどなぁ限度ってものが」
「だって甘いもん欲しいときいっつもゴトーいないんだもん」
と言って口を尖らす。
「はっ俺?」
うん、とタツミは返事と一緒に首を縦に振る。
どういうことかさっぱり理解できない。
まぁいつものことだと言ってしまえば簡単なことだろうが。
こういう何げない言葉に時々本心をまぜてくることがある。
なので聞き流すことは容易にできるが、そうはしたくない。
「うんゴトー。」
「俺が甘いもの?」
「おっすげぇーよくわかったね!」
実際はまったくわかってない。だからタツミの言葉に耳を傾ける。
「俺にとっての一番の甘いもんはゴトーだから。ゴトーいなかったら甘いもん補給できないじゃん」
だからお菓子はゴトーのかわり。なんて可愛い事を言い出した。
「じゃあ、俺んとこに住めばいいだろー」
「それはヤダ」
即答され思わずへこむ。
「なんだよ矛盾してんな」
「だってずーっとゴトーと一緒にいたら俺大変だもん。お前と一瞬でも離れたくなくなるから!」
「タツミ…!」
思わず顔が赤くなる。
ここがスーパーじゃなければいますぐにも抱きしめてキスするのに。
2人きりじゃないことに恨めしくおもう。
「ったく可愛いことばっかり言いやがって」
「ねぇゴトーちょっと屈んで」
「ん、なんだ?」
ちゅっ
一瞬、触れたか触れないかの軽いキスをされ動揺する。
思わずまわりをキョロキョロ見回してしまう。明らかに今挙動不審になっている。
「そんな焦んなくったって誰も見てないって、あっでも監視カメラには見られたかも。ニヒヒー」
突拍子もない事ばかりされ、俺はまた今日も振り回されぎみ。
でもそんな事が嬉しいとか思う俺はやっぱり末期だ。
だからとりあえず暑さのせいにしておいた。この耳まで真っ赤になった顔もすべて。

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