お口の中に、悪さをする住人が現れた!!


まずい。
かなりまずい。

……歯が……痛いかもしれない。





デンタル☆でんじゃらす





「……どうしたの? ディアッカ。険しい顔して」
「いや? 別に?」

極力平静を保ちながら、彼は笑顔でミリアリアの不安を振り払った。
実際、険しいが。
かなり、厳しいが。

彼女に気付かれてはならないと、出された食事を頬張る。


〈歯……っつーよりも、歯茎が痛ぇんだな、これ〉


何とか料理を口にしながら、ディアッカは自分を苦しめる痛みについて、かなり冷静に分析していた。
痛むのは左側で、右側で噛む分には大した問題も無いらしい。
痛いは痛いが。
冷たいものでも食べなければ――


「はい、ディアッカ。食後のデザートもどうぞ」


――出てきてしまった。冷たいものが。
食べれば痛い。
食べなければ怪しまれる。

ディアッカ、大ピンチ。

「……どうしたの? 食べたくない?」
「いや……」

不安気な表情で、ミリアリアはディアッカを覗き込む。
目が言っている。いつもは食べるのに、どうして今日は食べないんだろう……と。
これは男として、食べないわけにもいくまい。
彼は頑張った。頑張って、痛みをこらえてアイスを食べ――

「……っ痛ぇー……」
「え? 痛い?!」

普段は放たない言葉の出現に、ミリアリアは慌てふためいた。
彼が痛がっているのが『歯』であることに気付くまで、大した時間もかからず……

「ちょっと……え? 虫歯?? さっさと病院行きなさいよ!」
「嫌だ!」

ディアッカの即答に――ミリアリアは目をまん丸にした。




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