カラオケに行った結果


始まりは、カラオケボックスの前だった。
二時間楽しく歌いきって。
また二人で来たいな……とディアッカが言ったら――


「もうディアッカと来たくない」


ミリアリアの一言は、晴天広がるディアッカの背後に、激しい落雷を降り落とさせた。





マーメイドボイス





「聞かせてくれ。何でディアッカに、もう一緒にカラオケ行かない、なんて言ったのか」
「……逆に聞くけど、何でそれを、カガリに話さなくちゃならないのかしら?」

広い応接室に、ミリアリアとカガリの声が響く。
オーブ官邸での取材中、突然、国家元首・カガリから呼び出しを受けたミリアリア。仕事を中断しての話である。一体どんな内容なのかと緊張すらしなが応接室に行けば、中身がこれなのだから……拍子抜けして口調が少々きつくなっても、文句は言われないだろう。

「話……それだけなら、私、仕事に戻るわよ?」
「あ、待て、ミリアリア!!」

呆れ、席を立つミリアリアを、カガリは引き止める。

「良いじゃないか、理由言うくらい! 一言で済むだろ!!」
「だから、カガリに話す必要は無いって言ってるの。どうしてそんなに知りたがるのよ……て言うか、何でカガリが、昨日のカラオケの件、知ってるの?」
「ぎくっ」

カガリは身体で「しまった」と言ってくれた。
ミリアリアは、昨日カラオケ終了直後、ディアッカに「もう来ない」宣言をしたことなど誰にも話していない。それどころか、カラオケに行ったことすら口にしてないのだ。
――となると。

「ディアッカ、カガリにまでベラベラ喋ってるの?」
「私じゃない。アスランに、だ。おかげで朝まで相談会だぞ? 全く……久々に二人で、ゆっくり過ごせると思ってたのに、変な時に来て……」

ぶつぶつ呻くカガリを見て、ミリアリアは「あれ?」と思った。



アスランに愚痴をこぼしに行ったのなら、それは彼の部屋だろう。
カガリは、そこにいた。

朝まで、ずっと。

疑問はそのまま、口に出る。


「てことはカガリ、昨日はアスランの部屋に泊まる予定だったの?」



…………………………………………。



「まあ、そこは置いとけ」
「泊まる気だったのね?」
「おかげでアスラン、寝不足だ」

追及されようが、カガリは構わず話を進めた。

「別に良いじゃないか、また行ってやったって」
「駄目よ……無理」

神妙な面持ちで、ミリアリアは首を振る。

「だって私…………音痴なんだもん」
「は?」

瞬間、カガリの目は丸くなった。



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