大きな背中に大きな文字を書いて伝える気持ちは…


コトノハを紡いで





「なあ、ミリィ。言葉当てやらねえ?」
「言葉当て?? ……って、クイズか何か?」
「おお。背中に文字書いて、それを当てるってゆ――」
「却下」

みなまで言わせず、ミリアリアは切って捨てた。
あまりにも綺麗にすぱっと処理をされ、ディアッカはパクパクと口を動かしてしまう。

やり場の無い手がひどく虚しい。

「……なんで却下?」
「何となく、あんたが私にやらせたいこと、分かるから」

ムッと、ミリアリアは呻く。

「どうせ、好き〜だの、愛してる〜だのって言わせたいんでしょ?」

何と言うか。
まあ、何と言いますか。


全てバレバレ。


「さっすがミリアリアさん……付き合いの長さの勝利?」
「あんたの単純さの勝利」

ひくつくディアッカに、ミリアリアは微笑み返す。
そこに、友好的な感情は無い。

「別に……良いじゃない、今更。そんなの」
「え〜? ミリィは俺に、好きだよ〜とか、愛してる〜とか、言われて嬉しくないのか?」
「……言われすぎると鬱陶しい」

嬉しい――と素直に言うのが悔しかったか、彼女は少しだけ、嘘をついた。

鬱陶しいなんて、そんなことない。ディアッカから愛の言葉を囁かれるたび、胸の奥底が熱く疼いて……


もっと言って欲しくなって。


だが、ミリアリアの言葉を真に受けてしまったディアッカは――本格的に落ち込んでいた。

「そっか……鬱陶しいか……」
「…………」

多分、撤回した方が良いのだろうが、ここまでくると、後には引けない。
だんまりを決め込み、ミリアリアはジッと、ディアッカを見て……

「……んじゃさ、さっきの言葉当て……あれでちょっと、決めねえ?」
「……何を?」
「ミリアリアが俺の背中に文字書いて、俺が当たったら今までのまま、俺のペースでガンガン言う。当たらなかったら……自重する」
「うん……良いけど……」


このまま毎日のように好き好き言われても構わないなら、単純な言葉を書いて。
本当に毎日好き好き言われるのが嫌なら、難しい言葉を書いて。

……彼はそう言っている。




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