ディアッカとはぐれたミリアリアの前に現れたのは…


ディアッカと出かけた。
何だか、プラントに送るものがあるとかで、私がそれに付き合う形になった。

百貨店に行って十分足らずで、彼の用事はあっけなく終了。私はお手洗いに行って、服とかちょっと直して……さて、これから遊びに行こう! という所で、事件は起きた。


お手洗いの前で待ってるはずのディアッカが、いない――





迷子の紅い風船





「……え? ええ?? 何であいつ、いないのぉ?!」

女子トイレの前で、ミリアリアは辺りをキョロキョロ見回した。
ディアッカは背も高いし、目立つ容姿をしている。いつもなら、少し離れた場所にいようとも、結構あっさり見つけられてしまうのだが……見当たらない。

「どこ行ったんだろう……」

ディアッカもトイレに入ったのかと思ったのだが、何分経っても、隣の男子トイレからディアッカが出て来る気配は無い。
そこら辺をふらついているのかと思い、フロアを一周してみたものの、姿は見えない。

「うそ、本当にいない……」

こういう時は携帯を使おう――と思っても、取り出したら圏外で、文明の英知を使うことは出来ず。


ミリアリアは、しゃがみ込んでしまった。
一人になった、というよりも、一人にされた、という意識の方が遥かに強い。
置いていかれたような孤独感。
きっと、ディアッカにそんなつもりは無い。多分、もう少し待っていれば、何事もなかったように合流できていたと思う。


動いた自分が、話をややこしくしたのだ。


「何でこんな所で、はぐれないといけないのよ……」

早く探しに来い、と心の中で訴えながら、無情にも時間はどんどん過ぎていき……

ふと、ミリアリアの思考の中に、ある単語が浮かんだ。
認めたくは無いが、これは……何て言うか、この状況は、はぐれたと言うよりも――



「おねーちゃん、迷子?」



へこむミリアリアの気持ちは、目の前に立つ少女によって代弁された。
目を向けると、二つの風船を持つ小さな女の子が、ミリアリアを不思議そうに見下ろしている。
赤い髪、ピンクのワンピース。誰かを髣髴とさせる容姿の女の子は、右手に持っていた風船を、ミリアリアに差し出した。

「はい」
「は?」
「これ、持って」
「……?」

訳が分からないが、相手は十歳にも満たないような女の子。邪険に扱うことも出来ず、静かに風船に手をかける。


真紅の風船。


「はい、立って」
「…………」

言われるまま、ミリアリアは立ち上がる。そのため今度は、ミリアリアが見下ろす立場となった。
胸の高さほどの身長の女の子は……やはり、誰かに似ていた。




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