一番の嘘つきがついたのは、とても哀しく痛い嘘


「出るって……大丈夫なのか? ミリアリア」
「もう平気よ。ほんと、サイって心配性よね〜」

深刻そうなサイとは対照的に、ミリアリアはカラカラと、大雑把に明るく笑ってみせた。





やさしい嘘があるように





オープンカフェで語らう二人の話題は、来週行われる慰霊祭についてのもの。
行われるのだ。国を焼かれ、奪われた命を弔うための式典が。

あの戦争が終わって、もう半年が経とうとしている。それは、彼女の恋人が死んで早一年が経つ、ということでもある。
戦時中は、忙しさと慌しさと……常に命の危険にさらされている緊張感が、皮肉にも、辛い現実を直視させてくれず、ショックが和らげられていた。
それゆえ、戦いの無い世界に戻された時の彼女の錯乱振りは、見ていられないほどのもので。

「……やっぱり、休んだ方が良いって」

外出できる様になったのも、わずか一ヶ月前のことなのだ。
ようやく、ここまで回復した彼女の心。
だからサイは怖かった。慰霊式典に出席などしたら、以前の苦しみに、再び襲われてしまうのではないか……また、一人で殻の中に閉じこもってしまうのではないかと。
しかし、ミリアリアは引かない。

「本当に大丈夫。私だって、式典に参加させてよ。一緒に祈らせて」
「でも――」
「もう、トールのことは吹っ切ってるから」

サイにとって信じられないことを、ミリアリアはきっぱりと告げる。


「私ね、今、ディアッカと付き合ってるの」



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