お化け屋敷に入ってみよう! ミリアリアは怖いもの――ホラー関係が大好きである。 怖い怖いと思いながらも、ホラー映画を見るタイプ。 怖い怖いと言いながらも、怖くて面白かった、と言ってくれるタイプ。 だから彼女は入りたかった。このアトラクションを素通りするなんて、彼女のホラー魂が許してくれない。 「良いじゃない〜っ! 入ろうよ、ディアッカ!!」 とある遊園地で、子供の様に駄々をこねるミリアリアと。 「絶対ヤだ。俺ー、こーゆーの好きじゃねーもん」 これまた突っぱねるディアッカの姿が見える。 二人はかれこれ、20分ほど、こんなやり取りを続けていた。 ――お化け屋敷の前で。 お化け屋敷の誘惑 「ほら、そろそろ行こうぜ? さすがに邪魔だって……」 「何で嫌なのよ」 腕を引っ張られ、ミリアリアはふくれっ面を作った。 対ディアッカ用・最強の抵抗方法である。 「さっきから言ってんじゃん。好きじゃないって」 「良いじゃない。一回くらい、付き合ってくれたって」 「んー、でもなー……」 いつに無く渋るディアッカに、ミリアリアは不思議なものを覚えた。 普段なら、ディアッカはミリアリアを優先してくれる。それが今回は、一向に譲ってくれる気配が無い。 これはまさか……と彼女は考えた。 「もしかしてディアッカ……怖いの?」 「怖いんじゃなくて、好きじゃないの」 ここは譲れない場所なのだろう。ディアッカは、オウム返しに否定した。 しかし、この反応はミリアリアに味を占めさせることになる。 ニヤリ、と笑って。 「そっかー。ディアッカ、お化け怖いんだ〜」 「だから、怖いんじゃなくて――」 「怖くないなら、入りましょ」 ――そう来たか。 ディアッカは内心、頭を抱えた。 これはもう、退路が無い。 というか――下手にあきらめさせようと説得するよりも、こっちが折れてお化け屋敷に入った方が、色々と早いかもしれない。 いや、早いだろう、絶対。押し問答したって、言い合いが続くだけなのだから。 「……分かったよ」 彼は20分かけて、ようやくこんな簡単な答えにたどり着いた。 |