黒ミリ降臨


小悪魔遊戯





それは、一本の電話から始まった。

「なんっつーかさあ、もーすぐ俺、誕生日なわけよ」
《そうね》
「うわ、そっけねー! 何? ミリアリアってば、彼氏がもうすぐ誕生日って言ってんのに、おめでとうの一つもねーの?!」
《はいはい、おめでとう》
「全ッ然、気持ち入ってねー……」

氷水を頭からかけられる様な冷たさに、ディアッカはうな垂れた。


ミリアリアがディアッカに冷たいなど、いつものことである。
しかし内容が内容だけに、普段よりもディアッカのダメージは大きかった。


後数日で誕生日なのに――


「せめてさー、誕生日は祝いに行ってやる〜くらいの発言出たって、良いと思うんだけど」
《……つまりあんたは、わざわざ私に、プラントまで行けと? 忙しすぎて毎日くたくたな私に、無理矢理休みとって、あんたの誕生日祝うためだけにプラントまで行けと??》

……見える。
電話越しでも見えてしまう。眉間に人差し指をあて、かなりご立腹なオーラを出しまくっているミリアリアの姿が。
ディアッカは、ちょっとだけ不安になった。

「……ええと、本当に来る気なし?」
《あんたまさか……本当に来いって言ってんじゃないでしょうね?》

声はとてつもなく冷たくて、ふてくされてる感が溢れている。
何だろう……自分はそんなに、変なことを言ったのだろうか。
そんな態度をとられると――

「さみしい」
《そーなんだ》
「さみしくて、死んじゃいそう」
《それって普通、女の子の台詞》
「男も女も関係無ぇっ! 俺は今、寂しくて死にそーなんだよっ!!」

自棄になったとしか思えない、ディアッカの悲鳴。しかし、ミリアリアが態度を変えることは無かった。

《死にそうな人間は、そんなに元気じゃないわよ》

現実的なことを、さらりと言ってのける。


寂しさが増す。


「……なー、マジで来いよ、お前。プレゼント持ってさー……何なら、俺がそっち――」
《悪いけど、もう郵送したから》

――そっちに行く――という選択肢は、提示する前に却下された。
がくりと力が抜ける。

《ちゃんと当日に着くよう配達指定かけてるから……あ、受け取ったらちゃんと、連絡頂戴よ? 一応、気合入れて送ったから》
「へいへい」


返事をするディアッカは、魂の抜け殻と化していた。



*前次#
戻る0