ある夜の出来事


二人ぽっちの夜





「あーあ。あいつらどうしてるかな〜」
「話そらし切れてないわよ、それ」

じと目でミリアリアはディアッカを見る。
すると横にいる大男は、頬につうっと冷や汗を流しながら、あっけらかんと言い放った。

「いや、これは俺だけの責任じゃないだろ?」
「九割あんたのせいじゃない」
「おおっ。ミリアリア、一割は俺のせいじゃないって認めてくれるんだ」
「……前言撤回。百%あんたのせい」

ムッと顔をしかめたミリアリアは、揚げ足を取るディアッカに腹をたて、そっぽを向いた。

ここはオーブ官邸の一室。
カーテンが開いてるのに日の光が入ってこないのは夜だからで、暗いのに明かりを点けないのは、ただ今停電中だから。
なら、停電なのに部屋に二人で座り込んでいるのは――停電で電子ロックがかかってしまい、扉が開かなくなったから。

「最悪ー。いつまで私、ここに居れば良いの〜?」
「まあ、電気が復旧するまでだね〜」

ディアッカは、こんな事態でもあっけらかんとしている。

「ま、なんとかなるだろ」「なんであんた、そんなに楽観的なのよ」
「だって、悲観したってどーしよーもねーじゃん」

さらりとディアッカは言ってくれる。

「今俺達に出来ることって何さ。内側からロック解除する方法なんてねーし、なら暗く落ち込んでるより、楽しいこと考えてた方が、気ィ楽じゃん。それともお前、いつまで経っても開かない〜って、うじうじ悩んでたい?」
「それは……嫌だけど」
「だろ? ま、開く保証が無いわけじゃないんだし、電気さえ復旧しちまえばこっちのもんだ。気楽にいこーぜ、気楽に」
「……あんたの楽観主義が羨ましいわ」

頭を抱え、ミリアリアはため息をついた。

確かにディアッカの言う通りなのだが、人の心はそう容易く理屈で動き切ることは出来ない。
とても小さな不安が、いつの間にか大きな不安に変わっていることだってある。




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