ミリィさん誕生日おめでとう☆


ハッピーバースディ





「たいくつ〜」

その日、ミリアリアは暇を持て余していた。


やることがない。


部屋の片付けは済んでしまったし、仕事もさくさく終わってしまった。やって来たたくさんのメールも全て返信してしまい……本当に何も、やることが無い。

メールは全て、ミリアリアを祝う内容だった。
今日は、彼女の生まれた日だから――

でも彼女の友人は、総じて忙しい人間が多く、彼女も時間を無理に作らないでくれと断りを入れたので、めでたくメッセージの嵐となったのだ。
友人関係が駄目なら家族と過ごそうかとも思ったが、両親は両親で忙しく、体があくのは夜になってからとくる。現在一人暮らしゆえ、実家に帰るのことも考えはしたが、これなら、家にいようが実家にいようが変わりはない。

「……来ないな〜……」

ぱたん、とノートパソコンを開ける。
新しいメールは……まだ無い。

一人だけ、全くメッセージを送ってこない男がいる。きっと一番に届くと思っていたのに、蓋を開ければ、くる気配すらない。

「……忘れてるのかな……」

彼も忙しい身の上だから。

「……私のことなんて、どーでも良いのかな……」

手が自然と、メールの受信ボックスを開く。
表示される受信フォルダの一番下に用意された「ディアッカ」の文字。彼から送られてくるメールは、全て保護機能をかけ、ここにしまわれていた。
最近届いたメールを読みながら……目にうっすら、涙が溜まる。


ディアッカがザフトに戻って。
離れてようやく、彼への思いの深さを認識した。


「……あいたいよ……」
「誰に?」
「そりゃ――」

問われ――ミリアリアは固まった。
一人暮らしの家。客人のいない部屋に、ミリアリア以外の人間がいる。その人物は、パソコンの液晶画面に鏡写しにされたので、すぐさま把握することが出来た。
今、地球にいるはずの無い男。
恋焦がれた男の姿。

「無用心だな〜。一人暮らしなんだから、鍵かけとけよ」
「……な、んで……?」
「ん? や、インターホン鳴らしても反応ねーし、いないのかな〜って思ってドアノブに手ェかけたら開いてるし……あ、ちゃんと『お邪魔しま〜す』って言って――」
「――じゃなくて!」

的外れなことを言う男を、ミリアリアは制止する。

「何でここにいるの? あんた今、プラントじゃ――」
「恋人の誕生日祝いたいからって、一週間休みもらった」

もちろん、そんな事で受理されるとは思えないが――この男は本気だ。本気で、この理由を押し通す気でいる。

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