ディアッカさんオーブ在住設定2


ビターチョコレート





うろうろ。
うろうろ。
うろうろ。


……はあ。


何度も何度も、ディアッカの家の前を行ったり来たりと繰り返し……そしてミリアリアは大きくうな垂れた。

今日はバレンタインデー。乙女達の決戦の日だ。
例にももれず、ミリアリアも、勝負の獲物は用意している。


本命チョコレート――


綺麗にラッピングされたチョコレートは、ミリアリアがディアッカに渡そうと、精魂込めて作った一級品だ。

そう、ディアッカのために。

しかし彼女は、よりによって作り終えた後……キラやサイに義理チョコを配っている最中に気付いてしまった。
思い出してしまった。

2月14日。
聖バレンタイン。
女の子が男の子に、愛の告白をする日。

連合が――ユニウスセブンを破壊した日。

だから『血のバレンタイン』と呼ばれているのに……どうして抜け落ちてしまったのだろうと、ミリアリアは自分を責めた。
ディアッカは生まれも育ちも生粋のプラントっ子。今日と言う日の重みは、すでにチョコを渡してしまったサイやキラとは比較にならない。

同胞を追悼する日にこんなことされたら、いかなディアッカでも、困惑するに決まっている。嫌悪感すら抱くかもしれない。

「どーしよ……」

何とも言えない感情を抱え、ミリアリアはチョコを握りしめた。
割れてしまいそうなほど、強く。

いっそ割れてしまえ――そんなことすら考え始めた時だ。


「おいおい、何やってるんだ?」


後ろから伸びた手が、ミリアリアの手を静止した。
男の人の声。
一瞬、ディアッカが家から出てきたんじゃないかと思ったが、それは違った。


声が違う。
手の色が違う。

そして自分は、この声を良く知っている。
まさか――俄かに信じられないながらも、彼女はその名を口にした。

「ノイマンさん?!」
「久しぶり、ハウ君」
「どーしてこんな所に……」
「え? 俺の家、この裏だから」

言ってノイマンは、右親指をディアッカ宅の方へと向けた。

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