ディアッカさんオーブ在住設定でお願いします


銀に誓いを





片やちょっとだけ踵を上げて。
方や少しだけ膝を折って。

執り行われるは、別れの儀式。

デート帰りの、ミリアリアの家の前で。

毎回ディアッカから与えられるそれは、いつしか珍しいものではなくなったが……未だにミリアリアは、この儀式に慣れることが出来ないでいた。

「……ふぅ」
「苦しかった?」
「ん? へーき」

本当の事を言うと、息の仕方が、いまいちよく分からない。
口は塞がれてるし……鼻で息をすると、鼻孔がディアッカの香りで満たされ、おかしな気分になってしまう。

「じゃ、またね」
「あ――ミリィ!」

家に戻ろうとするミリアリアを、ディアッカは呼び止めた。

「え――?」

振り向くミリアリアの手を引っ張り、つよく強く、抱き締める。

「ど、どうしたの?」

思いもよらぬディアッカの行動に、ミリアリアは困惑した。
別れ際のキスの後に、こんなこと……初めてだ。


心なしか、震える身体。


何か、嫌なことでもあったんだろうか……
彼女は励ますように、手をディアッカの背中に回した。

「……ミリアリア」

数秒後、彼は自ら身体を離した。
その代わり――

「……?」

彼女の手に何やら握らせる。

「なに……?」

手を開くと、そこにあるのは灰色の小箱。
ミリアリアは目を見張った。
蓋を開けて、出てくるのは――


ほのかに輝く、シルバーリング。


「……それ、さ。左手の薬指につける気、ない?」
「薬――え? 薬指?? 左手?!」

驚き、ディアッカを見上げたミリアリアの動きが止まる。
彼は……とてつもなく真剣な表情だった。
その瞳が教えてくれる。この指輪が、恋人に渡すささやかなプレゼント――という域を超えた物である、と。

「……左手、の……?」
「返事、すぐじゃなくて良いから……せめて預かってて」

言うだけ言って、ディアッカは車に乗り込んでしまう。
残されたミリアリアは、指輪を片手に、走り去る車をボーっと見送った。

「……ひだり、て……??」





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