カガリの勘違いが全ての引き金 君のための捧物 そこは、いつも人で賑わう人気の本屋さんだ。ミリアリアはその本屋を愛用し、今日も雑誌を求めてやって来たのだが、この日は少々、賑わい方が違っていた。彼女を囲むように立つ黒いスーツの男達が、本屋に物々しい雰囲気を与えている。 いや、実際彼らが取り囲んでいるのは、ミリアリアではない。彼女の横にいる、この国の代表者だ。 「ねえ、カガリ。そろそろ帰ったら?」 「お前一人にして帰れるか!!」 公務途中のカガリは、帰宅中にミリアリアを見つけた。仕事が終わってから会いに行こうと思っていたので、これはチャンスと声をかけた。そして色々話している内に――何故かカガリが怒り始めたのである。 「薄情な奴らだ」 「誰が薄情なの?」 「みんなだみんな!! 今日はお前の誕生日なんだぞ?!」 ぴくり、とミリアリアの肩が震えた。 そう。今日は彼女の誕生日。なのに誰も、誕生日のプレゼントを渡しに来ていないと知って、カガリの思いが爆発したのだ。 「なのに……なのにどーして、誰も祝いの一つも言いに来ない!!」 「誕生日一つでそんな……無理矢理祝って欲しいとも思わないし」 「強がるなよ、ミリアリア……」 カガリには分かる。ミリアリアは寂しいのだ。 彼女には、たくさんの友人と呼べる人間がいる。なのにその誰も、おめでとうの一つも言って来ない現実。それを紛らわそうと、ミリアリアはこんなにも強がって―― 「それに私の誕生日、明日だし」 「…………へ?」 さらっと明かされる事実に、カガリは固まった。 明日。 明日と言った。 「あれ、お前、16日じゃ……」 「17日よ」 日付を間違えていたのではない。 根本的に、ミリアリアの誕生日を間違えて覚えていた。 血の気が引いていく。 「あ――そうそう。アスランに言っておいて。明日は全ッ然期待して無いからって」 にっこり笑うミリアリアは、その身体に恐ろしいほどの冷気を漂わせていた。 |