雪山に遊びに来た一行ですが


とある雪山に二人はいた。
その中にある、無人のロッジの前に。
脇には柔らかな雪壁があり、そこに突っ込むスノーモービルが一機。



何のことは無い。キラ達と一緒に、スキー場に遊びに来たのだ。
そして、スノーモービルを借りて雪景色を堪能していただけだったのに。



「信じられない……」


数分前までの体験に、ミリアリアは顔を青くし、うな垂れる。


「そーか? なかなか貴重な経験だったと思うぞ?」


隣のディアッカは、あっけらかんと笑うだけ。
スノースーツを身にまとう二人の、何とも対照的な姿が雪雲の下に見て取れた。

「しっかしな〜。ちゃんと整備しとけってな〜」
「笑ってる場合じゃないでしょーが!!」

あまりにも緊張感が無さ過ぎて、ミリアリアは憤慨した。






もっとずっと、傍にいて





ディアッカが運転し、ミリアリアが後部に乗る――という形でスノーモービルを走らせること十数分。最初は正規の滑走ルートを走っていたディアッカだったが、いつの間にか、コースとは違う……明らかに『人の手の加わっていない場所』を走り始めて。

「ねえ、ここ、入っちゃいけないところじゃないの? 一回止まった方が……」
「って言われてもよ、ブレーキ効かねーんだよな」
「えええっ?!」

ブレーキをかけようと思ったら、全然効いてくれない――
どうにか止まるかスピード緩めるかしたくて……そうこうしている内に、こんな、わけの分からない所を走る羽目になってしまった。
どれだけ蛇行運転しただろう。突然視界が開けたかと思ったら、同時に大きな雪壁が現れてくれて。




「全く! 一歩間違えたら二人とも死んでたかもしれないのよ?! 分かってるの?!」
「分かってるって。だからほら、謝ったじゃん」
「あんた絶対、分かって無い!!」

ロッジに入り、椅子に座り様ミリアリアは怒り叫ぶ。ディアッカは「やれやれ」と一度小さく息を吐いて、中央の暖炉に火を灯した。
彼だって、ちゃんと分かっている。
怪我がなかったこと自体、不思議だったこと。



――今、二人が『遭難』状態であること――




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