トールのお墓参りではっきりした、ディアッカの誤解


風が凪ぐ





「なんなのよ、いきなりーっ!」

叫び、ミリアリアは座布団を投げつけた。
照準=ディアッカ――に見立てた、クマのぬいぐるみ。

投げて、ぬいぐるみが倒れて……最初は肩で息をしながら満足気な笑みを浮かべていたが、数秒も経つと、しかめっ面ながらぬいぐるみに歩み寄り、静かに座り直させる。そして、ぎゅっと抱き締めた。

考えるのは、ディアッカのこと。


「あんな奴……」


苛々しながら、ミリアリアは腕の力を強めていく。

訊かれてしまった。
トールの――墓参りに行きたいと。
自分と一緒に行きたいんだ――


「何で、私、こんな……」


なぜ苛々するのだろう。
これは、ディアッカがトールのことを考えてくれている証拠なのに。

ディアッカからトールの名前が出た瞬間、嫌だと思った。
彼の口から、トールの名を聞きたくなかった。


どうしてだろう……


いくら考えても、答えは出ない。

「…………」

ミリアリアは、クマのぬいぐるみを抱き締める。
苛々する。
同時に、なぜこんなに苛々するのか知りたいと思った。

……ディアッカと、あの場所に行ったら分かるだろうか。
トールのお墓の前で。

彼と一緒に手を合わせたら……




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