カガリ発案・要人を招いたパーティーに招かれて…


「ねえ……すっごく恥ずかしいんだけど、この格好……」
「何言ってるんだ。胸張って出ろって。すごく似合ってるんだから……なあ? ラクス」
「ええ。私も、とてもお似合いだと思いますわ」
「で……でも……」

カガリとラクスにそう言われても、ミリアリアは一歩を踏み出せなかった。
だって、こんな格好初めてで。
重いし、動きにくいし、足元フラフラするし。

「……やっぱ、着替えたい」
「だーめーだっ!」

ぐだぐだ煮え切らないミリアリアを、カガリは無理矢理、部屋から引っ張り出した。





桜の木の下で





その日の爽やかな風は、初夏すらも感じさせる暖かなものだった。
雲ひとつ無い青空に、薄桃色の花びらが舞う。その下に広がるのは、「和」の様相漂う円遊の風景。

――簡単に言ってしまえば、花見である。

オーブに、同盟国から送られてきた桃色の樹木「桜」の花が咲いた。聞くところによると、かの国では桜が咲くと、花を見ながらの食事会が催されるらしい。それを聞いたカガリが、「私たちもやろう!」と言い出してしまって……
かくて、オーブ国家元首主催・花見パーティーが開かれることとなった。


「大体、なんで私まで呼ばれてるの? こんな要人クラスのパーティーに……」
「お前は私の友達だ! 友達を呼んでなにが悪い」
「そうですわ、ミリアリアさん」

吼えるカガリに、ラクスも賛同する。

「カガリさんも、こんな催しごとは初めてですし……きっと一人でも多く気の置ける方に、傍にいてほしいのですわ」
「……ラクス……そーゆーことは、私のいない場所で言ってくれ……」
「あら、これはとんだ失礼を……」

と言いながら、ラクスは全く「失礼」とは思っていない。

「いいか? 誤解するなよ、ミリアリア。私は決して、心細いから皆にも来てもらったとか、そんなんじゃ全然無いんだからな!」
「はいはい。そういうことにしておいてあげる」
「ミリアリア!」
「お二人とも、仲がお宜しいですねえ」

カガリをからかうミリアリア。
ミリアリアに噛み付くカガリ。
二人を一歩はなれたところから見守るラクス。
生まれも育ちも現在の居場所も全く違う三人は、なかなか良いコンビネーションを見せてくれる。

桜が舞う。
ひらひら。
はらはら。
世界が桃色に染まっていく。
そんな中、会場内で一番大きな桜の木の下を通りかかった時だ。
ふとラクスが、ミリアリアに怪訝な瞳を向けた。

「……ミリアリアさん、大丈夫ですか?」
「え?」
「顔色が少しお悪いですわ……無理、してらっしゃいません?」

無理矢理連れてきて、無理矢理着替えさせて……そして、半強制的に会食で賑わう桜の下の散歩につき合わされていたミリアリアは、突然自分の身を心配され、呆気としてしまった。
別に、変わったところとかも――

「――ああっ! お前、足!!」
「え?」

足?
カガリに指摘され、彼女は視界を、足元に落とした。
パッと見る限り、大した変化は……いや、ある。何て言うか……右足の親指辺りが腫れている。歩きにくいのも足が痛い感じがするのも、慣れない履物のせいだと思っていたが、どうやら靴ズレを起こしてしまったらしい。

「痛いなら痛いとおっしゃって下さい。こんなになるまで、我慢しなくても……」
「大丈夫、そんなに痛くないから……」

なんて言ってみても、痛みを堪えていた事実を前に、ちょっとだけ頭に血を上らせてしまったカガリに通用するわけも無く。

「お前、痛くないわけないだろ、これで! そこで座って待ってろ! 冷やす物持ってくるから!」
「では、私はミリアリアさんの靴を取ってきますわ。これ以上、この靴で歩くのは無理でしょうから」

互いに仕事を確認し、二人は別々の方向へと走っていった。




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