二人の愛娘は寝付けないご様子


眠れない時、貴方はどうする?
早く眠りにつきたいのに、どうしても眠れない……そんな時の、とびっきりの方法を教えてあげる。





羊のかぞえ歌





夜も夜。時は深夜、心地良い寝息が響く中、むくりと起き上がる人影があった。
まだ四、五歳程度の、小さな女の子。
彼女は横で眠る両親を起こさないよう静かにベッドを出ると、大きなクマのぬいぐるみを手に、部屋を出ていった。向かうはリビング――の、三人掛け用のソファー。
ぬいぐるみを抱き締め、横になってみるが……やはり、眠れない。

「ここなら眠れると思ったんだけどなー……」
「何でここだと眠れるんだ?」
「だってここ、お昼寝ベッドだもん――」

言い切ってから、彼女は驚いた。
一体自分は、誰と話しているんだろう……と、恐る恐る後ろを見る。
金色の髪が見える。自分とは違う肌の色。暗闇の中でも見える、そのシルエットは――

「おとーさん……!」
「何だ? びっくりしたか?」

ニヤッと笑いながら、隣に座るのは彼女の父・ディアッカで。

「恐い夢でも見たのか?」
「ううん。ただ、眠れないだけー……」
「そうか……じゃあ父さんが、眠れるお呪いをかけてやろう」
「おまじない?」

少女はまどろみの目で、父親を見上げる。

「そ。昔、母さんが眠れない時にも使われた、とても威力のあるお呪いだ」

言うなりディアッカは、娘を自分の膝に寝かせた。
大きな膝に、小さな頭が乗る。
そして彼は、やさしく手で瞳を覆った。

視界が、塞がれる。

「羊って分かるか?」
「分かるよぅ。白くて、もはもは〜なやつでしょ?」
「まあ、多分それだな。じゃ、その羊さんを頭に思い浮かべて……数を数えてみようか」
「かず?」

娘の口から、疑問符が飛んだ。

「羊が一匹、羊が二匹……って、頭の中に一匹ずつ羊を増やして意って、数える。……って……お前にはまだ、出来ないかな?」
「できるもん! 私、羊さんの数くらい数えられるもん!!」

怒ると彼女は、大きく息を吸い、父を見返すべく数を数えだした。




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