裏タイトル[囮大作戦!!]


「!!」

光る刃を目に、ミリアリアの身体は固まった。

「ミリィ、逃げて!!」

手から血を流し、痛みをこらえるキラが吼える。
しかし――足が動いてくれない。
振り下ろされるナイフ。ミリアリアは目を閉じ、その身を強張らせた。





星の下の約束





「キラ、力を貸してほしいの!」
「でも……」

ある日マルキオ邸からキラを呼び出したミリアリアは、両手を合わせて懇願した。

「キラの力が必要なの!!」
「……ディアッカは?」
「あいつはだめ」

探る様に出てきた言葉を、彼女はあっさり切り捨てる。
プラントに籍を置くディアッカは、ただ今所用でオーブへとやって来ている。だからこそキラの口から、ディアッカの名が出たのだが……

「言ったら絶対、止められる」
「……僕も止めたいんだけど……」
「キラは、放っておけるの?!」

ミリアリアの声に、キラは言葉を失う。
放っておけるのか――そう訊かれて、「はい」とは答えられない。

オーブではここ最近、通り魔事件が多発している。
ターゲットは女性。夜遅くに出現し、女性をナイフで切りつける――という、何とも腸煮えくり返る様な犯行が、ここ一ヶ月で五件も起きているのだ。
幸い皆、軽傷で済んではいるが……その被害者の中には、二人の友人も含まれている。
だからこそ、捕まえたい。

「私が夜、一人で歩いて、キラには少し離れた所で周りを見てもらって、通り魔が現れたら一緒に捕まえる!!」
「でもやっぱり、囮は危険だよ!」

捕まえたいから――多少の危険はいとわない。
彼女の思考は、そこまで進んでしまっていた。

「……誰かがやらなくちゃ、いけないの」
「……ミリアリアがやらなくても、例えば警察とか……」
「キラ」

突如ミリアリアは、キラの目を真っ直ぐに見た。
ぐだぐだうるさい友人を黙らせる、一撃必殺技を披露するために。

「この間――うたた寝してるキラから、ラクスさん以外の女の人の名前、聞いたんだけど」
「!!!!!!!!」

歩幅にして四歩分、キラは激しく後ずさった。
……思い当たる節があるらしい。

「あ、あれは――」
「分かってるわよ、変な意味じゃないことくらい。でも……ラクスさんが聞いたら、悲しむわよねー」

この頃、何だか良い雰囲気のキラとラクス。こんなことでぶち壊される――ことは無いだろうが、彼女の反応を想像し、リアルな寒気に襲われる。

「……分かったよ」
「それで良いのよ。じゃ、よろしくね! ボディーガードさん」

かくてミリアリア発案・囮作戦は、無事決行されることになった。



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