[ザフト]のディアッカがミリアリアに会う為[AA]に忍び込んだとか



二人は共犯。
誰も知らない二人の関係。

二人は共犯。
今日も彼女の前に、共犯者が来る――





共犯関係






「……あんた、大丈夫なの?」
「大丈夫じゃなかったら、来ねーよ」

作業服を纏い、目元まで隠れるよう目深に帽子をかぶった男が、ミリアリアを抱きしめた。
それは――オーブに籍を置く、アークエンジェル内で起こった一幕。

誰もその姿を見る者はいない。
二人だけの隠れ家で、互いのぬくもりを確認しあう。


ミリアリアと――ディアッカ。


今やザフトに戻ったディアッカが、こそこそとアークエンジェルにいる理由……それはたった一つしかない。

「久しぶりー……」
「……うん」

強く、ひたすら強く、腕に力を込める。


恋慕の君に会うために。


そのために、ターミナルの補給班に紛れてやって来たのだ。
顔の知れた艦内で、正体のばれないよう気を使いながら、誰にも邪魔されない秘密の部屋まで移動して、お互いを確かめる。

「なんで戻ったんだよ」
「……何度も訊かないでよ」

会話が無くなり、口をつくのは決まってこれ。
彼女が戦艦戻ったことで、二人は簡単に会うことが出来なくなった。

「あんただって、ザフトに戻ってるじゃない」
「お互い様ってことね」

ミリアリアの反論に、ディアッカは大きなため息をつく。この態度は……納得していない。
いつもそうだ。彼は彼女の行動に、いちいち文句をつけてくる。

「私は私なりに、やりたいことがあるの」
「でもこのままじゃ、俺達、戦うことになっちまうな」
「そっちが退きなさいよ。隊長と仲良いんでしょ?」
「あいつは、一度言い出したら人の話全く聞かないんだよ」

言うなりディアッカは、ミリアリアの首筋に、顔をうずめた。


「……こっち来いよ……」


か細く、呻く。
こっち――すなわち『ボルテール』。
彼女が自分の陣地にくれば、全て丸く収まる……


そう、考えたい。

そんなわけないのに。


「私がそっちいって、どうなるってのよ」
「俺が嬉しい」
「じゃ、アークエンジェルはどうなるの?」
「…………」

彼は答えない。
答え――られない。

「何度も言わせないでよ」

ミリアリアは、一度言葉を切ってから、力強く言い切った。


「私はアークエンジェルの、CIC担当なんだから」


昔聞いた言葉だ。
この一言があったから、彼は前の大戦の折、アークエンジェルに乗る道を選んだ。

「……そうだったな」
「忘れないでよ」
「忘れてねーよ」
「忘れてたくせに」
「忘れてないって」

視線が絡む。
もっと、二度と離れられないよう、がんじがらめに絡まってくれれば良いのに……想いとは裏腹に、ゆっくり開く二人の距離。

時間が近づく。

「次はいつ、来ようかな」
「まだ来るの?」
「来てほしくない?」
「……無茶、しないでよ……」

こんな状況が発覚すれば、二人ともただでは済まされない。
特にディアッカは……こちら側の人間ではないのだから。

「大丈夫。ミリアリアが黙ってれば、案外バレないって」

本当にそうだろうか――と思いつつも、ミリアリアは首を横に振らない。
拒絶せず、受け入れる。


だって、逢いたいから。


逢いたいから、逢いに行く。そこがたとえ、敵軍の一戦艦であろうとも。
逢いたいから、招き入れる。たとえそれが、悲劇と隣合わせの物であろうとも。


歓びと不安。
そして――アークエンジェルのクルーに対して生まれる、小さな罪悪感。


そんな二人は共犯関係――




-end-

結びに一言
痛い系目指した結果の挫折。運命時間で二人を会わせようとしたら、こんなのが出来ました。
…今、ミリィさんはCICじゃないけど…オペレーターだけど…(滝汗)

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