38話のアスカガに乗っかってみる



となりにいる





「大丈夫だから、ね?」
「あ、ああ……」

アークエンジェルの通路を歩くカガリの足は震えていた。

アスランが帰ってきた。ただし、ザフト兵と一緒に艦を脱走した挙句、重傷を負う――という形で。
早く医務室に行きたいのに足取りはおぼつかず、ふらついてしまうカガリ。そんな彼女を見て、たまらずミリアリアは声をかけた。

「命にかかわる怪我じゃないんだから」
「それは、そうなんだが……」
「カガリがそんなんじゃ、アスランの方が心配するわよ?」
「う……」

ずばっと言われ、足が止まる。
彼女はそっと寄り添うと、優しく、諭すように続けた。

「あなたが看病する方なんだからね? 分かってる?」
「分かってるさ!」
「なら、ほら……落ち着いて」
「…………」

言葉無くうなずき、カガリは大きな深呼吸を始める。何度かそれを繰り返すと、顔を一度ぱしんと叩き、凛々しい瞳で前を見た。

心を落ち着け、活を入れる。
大丈夫――そう、自分を励ますように。

その様が、何となく自分と似てるな……とミリアリアは思った。

アスランとカガリ。ずっと一緒だったのに、陣営を分かつ事になっていた二人は、ようやくまた、いつでも話せる状態に戻った。
良かった――思う反面、彼女の心には、ぽっかり穴が開いている。


アスランが戻ってきて、キサカが戻ってきて、記憶は無いけどムウもいて……
昔の仲間がどんどん戻ってくる。
三者三様とらえ方は違えども、大切な人が隣にいるのはとても心強いこと。
でもミリアリアが『一番大切』だと思う人は、ここにいない。彼はザフトで、自分の信念のまま動いている。
寂しいような嬉しいような……複雑なところだ。
意識せず、嘲笑がもれる。

「どうした? ミリアリア」
「ん? 何でもない」

一向に歩き出さない彼女を不審に思い、カガリが振り向く。瞬間、ミリアリアは『いつもの笑顔』で答えていた。

「ちょっと考え事」
「? ……ならいいが……」

自分のことで精一杯なカガリが、ミリアリアの瞳が曇っていることに気づくことはなかった。


〈だいじょうぶ〉


彼女は自分を励ます。


〈こころはずっと、となりにいる〉


ディアッカが、同じ様に思っているかは分からない。
だが、ミリアリアにとっては真実。


姿が見えなくても心は一緒。


言い聞かせ、彼女はカガリの横に並んだ。




-end-

結びに一言
アスカガ再会良かったよかった。その幸せ、欠片で良いからディアミリにも分けてくれぃ(切実)

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