動けなかった。
どうしても、この場から離れることが出来なかった。
だって……


――ディアッカが、帰ってこない――





!!






メンデルを出てから、AA、クサナギ、エターナルの三隻は、宇宙を転々としていた。
隠れ、逃げ、戦争を終わらせるための策を練る日々。

そして、このコロニーに辿り着いた。名前までは知らされてない。ただ、奥には水や補給物資が眠る可能性があり、コロニーの調査も兼ねて、ディアッカと少佐が内部に潜入した。

数時間後……戻ってきたのは少佐だけだった。

中ではぐれたらしくて。

もう、半日以上経つ。
連絡は、全く無い。


そして私は……ずっとここで、格納庫で座り込んでいる。
バスターで内部に侵入したディアッカ。
戻ってくるのは……ここだから。


「嬢ちゃん、なんか飲むか?」
「いえ……いいです」

マードックさんの言葉に、私は首を振る。
何かを口にする気になれない。

「そうか……」

そう言ったマードックさんは、離れるどころか私の側に腰を下ろした。

「さすがに半日も音沙汰無いと心配だよなあ」
「…………」
「今、キラ達が捜索に向かったらしいぞ」
「…………」
「だから……そんな顔するな」

ポン、と肩に手を乗せるマードックさん。
私は……泣きそうだった。
ううん、もう……無理。


刹那、私は膝に顔をうずめた。


声を押し殺して――涙を流す。


「絶対、大丈夫だ」

肩を抱かれるのが分かる。
大きなマードックさんの手。

あ……この感じ……前にもあった。


思い出すのはディアッカの手。
前に一度、こうやって肩を抱かれたことがあった。

宇宙に上がった直後のこと。オーブに連合が攻めてきてから、張りっぱなしだった緊張の糸が切れた時、不覚にも、私はディアッカの前で泣き崩れてしまったのだ。
そんな私を慰めようと、ディアッカは優しく私の肩を抱いた……あの感覚がよみがえる。


どうしてこんなこと思い出したんだろう。
なぜ今、ディアッカを思い出すの?

心配なのは仲間だから。
大切な仲間だから。
それ以上でも、それ以下でも……


……何の言い訳だろう。
誰への言い訳か。
そんなこと考えている余裕がどこにあるの?



――彼はこんなにも、心の奥底に住み着いてしまっているのに――



どうしたって、消せない人なのに。

気がついて、認めて、涙を拭いて前を見る。
ディアッカが帰ってくるべき方角を。
その時だった。

「曹長!! ディアッカ無事発見だそうです!!」

格納庫にそんな声が響いたのは。

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