最悪な出逢いをした。
ひどいこともたくさん言われた。
でも……今、彼は側にいる。

そして何故か、人に膝枕をさせている。



「……ねえ」
「あん?」
「いつまでこーしてるのよ」
「いつまでだろーねー」
「重いんだけど」
「そりゃー良かった」

決定的拒絶の一言にも、ディアッカは動き出そうとしなかった。
どうやら休憩時間が終わるまで、ずっとこうしている気らしい。

……耳掃除なんか、してやるんじゃなかった。

「子供か、あんたは」
「いーよ、子供で」

呆れて出た言葉に、まどろみの声が響く。

……こいつまさか、このまま寝る気?
最悪。本当に動けなくなるじゃない。

「ちょっとディアッカ。足しびれてきたんだけど」
「……もー少し」

奴は、ごねる様に頭を少しだけ振った。
金色の髪が、太ももをかすめる。

「くすぐったい!」
「わっ!」

せめて動くな、という意味を込め、私はディアッカの頭を押さえつけた。


左側頭部を。


指は髪をすくい上げ、こめかみ部分をあらわにした。

傷跡――らしきものがある。
あの時。トールを侮辱された時、我を失ってつけた、あの傷跡。

たしかに、最悪な出逢いをした。
でも……


「ごめんね」
「何が?」
「なんでもない」
「……すごく気になるんだけど……」
「じゃ、忘れて」


そうは言っても、気にかかるようで。
俺、謝られるようなことされたっけ? と、ディアッカは頭を悩ませ始めた。

大いに悩むがいい……とか偉そうに思いつつ、傷跡に向かって、心の中で謝る。

痛い思いさせてごめんね。
でも。
あんな出逢い方でも、あなたに逢えて良かったと思ってる。



この先どんな未来が待っていても、きっと、この想いは揺らがない……


-end-

結びの一言
思いのほか(?)シリアス気味。

お題配布元→ディアミリストに30のお題

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