メンデルでザフト、連合と交戦してから三日がたった。
被害状況もはっきりし、復旧後の隠れ先も決まり、みんな心に落ち着きを取り戻していた。
混乱状態から解放されれば、その時見えなかったものが見えてくる。


「どうして……」


ブリッジでミリアリアはつぶやいた。
モニタを見ながら、誰に言うともなく問いかける。
目の前には、広がる闇の空間の異常を感知するレーダーが、静けさを保っている。
つまり『安全』だということだ。

今のところ、ザフトは追ってくる気配を見せない。地球連合にいたっては、月に戻ったきりだ。

それが=安全、という図式に当てはまるわけではないが、少なくとも現時点で敵艦がいない、貴重で『安全』な時間であることに間違いはない。


「……どうして……」


口をつくのは先ほどと同じ言葉。
メンデルでの交戦は、ミリアリアに、そしてAAのクルーに大きな衝撃を与えた。
キラに至っては、精神的疲労が原因で倒れてしまったほどである。

――まぁ彼の場合、それだけが理由ではないのだが。

ともかくクルー達は、思いがけない二人の登場に、驚きを隠すことができなかった。

一人はナタル・バジルール中尉。
AAの副長を努めた彼女は、アラスカでの転属後、同型艦であるドミニオンの艦長に就任したらしい。結果、ナタルとAAは敵対関係となり、命のやりとりをする羽目になってしまった。

もう一人は……フレイ・アルスター。目下ミリアリアの悩みの種その人である。

アラスカで、ナタル同様転属命令の出たフレイとは、ケンカ別れ、という言葉すら生温い表現に思えてしまうほど、最悪の別れ方をした。一言も話すこと無く、視線さえ合わせずに。

話し合いたいと、仲直りしたいと思いながら、ミリアリアは一歩を踏み出すことができなかった。

後に残るは後悔のみ。
でも、生きていればいつか会えると……そう信じてきた。


「……どうして?」


本日三回目の「どうして」が響く。小さな声は誰にも届かず、ただ虚空に消えた。

*前次#
戻る0

- 48 /66-