言葉にして伝わること。
言葉にしても伝わらないこと。












「なー、まだ終わんねーの?」
「……まだまだ」

戸口からかかるディアッカの声に、ミリアリアは不機嫌な声を上げた。
舞台は備品庫。

ミリアリアは、マリューから頼まれた備品を探しに来た。
ディアッカは、ミリアリアを食事に誘うために来た。

よく見る日常の風景だ。ただ場所がいつもと違うだけで。

「やっぱ、俺も手伝った方が……」
「遠慮します」

きっぱりと、ミリアリアは言い切った。
何と言うか、取り付く島も無い。
普通の人間ならここであきらめるところだが、如何せんディアッカは、普通一般の人間より、かなり神経が図太い人間だった。

「なんでさ。二人で探した方が絶対早いって」
「こんな狭い所であんたと二人っきりなんて、絶対嫌」

そんなに狭くもないだろ――という言葉を、ディアッカはノド元で飲み込んだ。

理由は簡単、意味が無い。

取り付く島どころか、はっきりとした拒絶の言葉を頂戴してしまったのだ。さすがのディアッカも、どうしようもない。
仕方ないので待つことにした。少しでも早く探し物が見つかるよう、話しかけないで。


静かな世界。
静かな空間。


時間にして一分強、突然ミリアリアは声を上げた。

「……ねえ」

まるで非難めいたもののように。

「いつまでそうしてる気?」
「お前の探し物が終わるまで」
「一人で行けば良いじゃない」
「俺は今日、お前と食べるって決めてんの」
「だから、その時間が無くなるって言ってるの。さっさと行きなさいって!」
「……お前の主張、意味分んねー」


瞬間、ミリアリアは小さく肩を震わせた。
ディアッカの、とても冷たい表情を見て。

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