ミリアリアは突然、驚くべき発言をしてくれた。

「一緒に寝てほしいんだけど」
「――」

事の重大さに、ディアッカは言葉を失う。

ちょっと考えてみよう。
これは一体何のお誘いだ? まさかミリアリアに限って、ディアッカが連想してしまった様な事を考えてはいないと思うが……

「変な想像、しないでよ?」

――やっぱり。
九割九分予想通りの言葉とはいえ、それでも肩は落ちてしまう。

「……どっちにしろ、こんなにギャラリーの多い格納庫で言うことじゃないと思うけど」
「良いじゃない。私がどこで何を言おうが」

言って彼女は頬を膨らませる。

「……その、この頃眠れなくって……で、誰かと一緒なら眠れるかな、って思って……」
「俺で良いの?」

ディアッカは至極当然な事を聞いた。
AAにはマリューだっている。女同士の方が変な心配しなくて良いのに、なぜよりにもよって、男の自分を選んだのだろう。

答えはすぐに返ってきた。


「ディアッカが一番安心できるから……」


困ったように、しかしはっきりと。
そしてディアッカの頭には、ミリアリアの声が山彦のように響いていた。

安心できるから…………できるから…………るから……

感動のあまり、涙まで出そうになる。
まさか寝所をともに出来るほど、彼女から厚い信頼を受けていたとは!

ひとしきり喜んだ後――彼を襲ったのは言いようの無い空しさ。
寝所をともに出来るほどの信頼――それはすなわち、自分が『男』として見られていない証拠ではないのか。

……むなしい。
いやしかし、考え方さえ変えてしまえば、これはミリアリアと親交を深める絶好の機会だ。
それに何より――誰彼邪魔が入ることなく、彼女の寝顔を間近で眺めるチャンスとも言える。

「分かった。俺がそっち行けば良いな?」
「うん」
「えーと、じゃ、夜な」
「……うん」
「…………じゃ、そーゆーことで」
「………………うん」

約束して――妙に気まずい空気が流れた。

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