「やっべーな……」

天を仰ぎ、俺は呻いた。
――って言っても、お天道様が見えるわけでもない。
広がるは闇。

金属片の建物の中、俺は明りのない天井を眺めた。





出たとこ勝負






らしくないミスをした。

連合やザフトの目を避け、拠点を転々としている三隻同盟。そんな時、新たな廃墟コロニーを発見した。
情報をかき集めたところ、どうやら物資や水が残されているらしいと判明。
それで、鷹のおっさんと俺の二人で、コロニーを散策することになった。

最初は二人で回ってたんだが、造りはただの研究施設っぽいし、団体行動取るより分かれた方が効率良いって話になって……で、おもむろに二手に分かれる道があったから、そこで別行動開始した。

で、適当に散策してたら――いきなり床が落ちた。

老朽化かなんだか知らねーが、大分脆くなってたらしい。俺の体重で落ちるんだから相当ガタきてるぞ、この建造物。
しかも、落ちた衝撃で通信機が壊れちまって、あんまり笑えない状況だ。
おまけに足がズキズキする。
思いっきり着地失敗したからなー……ひねったみてーだ。
とりあえずここから出て、おっさんと合流しないと。

痛む足を引きずり、金属の壁を伝って扉まで歩く。
そして――愕然とした。

……ロックかかってやがる……

建物はぼろくなってんのに、こーゆーシステムだけは生きてンのかよ!

へなへなとその場に座り込むと、俺は天井を見上げた。
自分の落ちた穴を。
そんな感じで、今に至っている。


「どーすっかなー……」

と言っても、どーにか出来るもんでもない。
足は痛いし、扉は開かないし……完全に閉じ込められてしまった。

……なんか、本格的に痛くなってきた。
一応応急処置はしたが……まずいな、結構重症かも。

気晴らしがてら、周りを見てみる。
そんなに広くない部屋の中、モニタやらキーパッドやら……まるで管制室みらいだな。
はっきり言って――つまんねえ。

あーあ、おっさんが行った道にすりゃ良かったなー。
ふてる様に、その場に寝ッ転がる。
体中ホコリだらけになるが、あまり気にならなかった。
あー……これもしかして、このままだったら『救助隊』とか結成されちまうんだろうか。うわ、カッコ悪ぃ! 探索に来て探される。
絶対嫌だ。

「おーい、おっさーん!」

半ばやけっぱちで叫んでみるが、音沙汰なし。
ちくしょう、どーすれば良いんだよ。

「……ん?」

何ともな気に横を見た俺の目に、古びた本棚が飛び込んできた。
実際目に入ったのは、本棚の下。
床に落ちる本の上に、青く光る石がある。
……いや……宝石?

何故だか凄く気になった。
ただ青く光ってるだけなのに。
足の痛みも忘れて、青い石を拾いに歩く。

「指輪?」

銀縁に、青い宝石を携えた指輪。
吸い込まれるような、青。
何かが頭をかすめていく。

「それと……?」

ついでに俺は、指輪の下にあった本も取ってみた。
古びているとは言え、これだけ豪勢な研究施設なのだ。さぞかし難しい専門書だろう……と思いきや。

ホコリを払い、あらわになった表紙を見て言葉を失う。


タイトル――呪いの姫君と100人目の勇者。


……まて。
なんでこんな所に、絵本なんかあるんだよ……

違和感を覚えながらも、俺は本の表紙を静かにめくった。

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