目覚めが悪い。
それは全て夢見が悪いせい――かと思えば、それだけではなかった。
体内時計が、まだ目覚めの時間ではないと告げている。

「今何時だよ……」

見れば、深夜二時を回ったばかり。
変な時間に目が覚めてしまった。

「ねみー……」

と言ってはみるものの――実際、眠気は絶好調であるが――一度起きてしまった頭と体は、安らかな夢の世界へ戻ろうとしてくれない。

……いや、元々安らかではないか。

現実がこれだけギスギスしたものなのだから、夢くらいは……もっと平和で、殺し合いなんかしなくてもいい世界であれば良いのに。

いつ頃からだろう。
『戦争』の夢でうなされる様になったのは。

「……あー……くそ」

すぐに原因は思い当たった。
思い当たって、切なく唸る。

「……何か飲も」

ノドに渇きを覚え、ディアッカはのそりと起き上がった。





彼に夢を見せるのは、「トール」という少年の存在。
会った事はおろか、見たことすらない少年の「死」が、彼に恐怖を与えている。



食堂でコップ一杯の水を一気に飲み乾したディアッカは、それだけでは足りず、二杯目をなみなみに注いだ。
これまた一気に飲もうとしたが――かすかに写った自分の顔を見て、思わず手を止める。


なんて情けない顔をしてるんだろう……


数ヶ月前まで、赤服を着ていたザフトの軍人とは思えない。



トールという少年が死んだことで、彼は今、ここにいる。



彼の死がなければ、多分――いや、確実にディアッカはザフトに戻っていただろう。

捕虜になり、ミリアリアに刃を向けられたことから、彼の考え方は大きく変わっていった。
あれは、トールを侮辱したから起きた出来事であって、彼が生きていたら、まずありえない事件だ。
ミリアリアの悲しみに触れ、自分とザフトと連合と戦争と……色々な事を考え直すこと、そしてオーブを守ると言った彼女の強い意志を目の当たりにしなければ、AAには乗っていないだろう。

かの国がとった道は険しすぎる。あまり希望を持てるようなものではない。



「でも……なあ」

コップに映る自分に語りかける。



守りたいと思った。
彼女の守りたい世界を……



いや、彼女自身を。



「……トール、か」

寂しげに口に出た、少年の名。

彼が死んだことで、ミリアリアに触れ合える。
でも彼女は、トールの死で心を痛めている。
そんな彼女を見るのは――つらい。

考え出したらキリがない。

そもそも、自分はトールのことで口を出せる人間ではないのに、落ち込むミリアリアを見ると、慰めたいと思ってしまう。
しかし事は、何の関係もない人間が、おいそれと発言して良いレベルのものではないのだ。


「……関係、ねーんだよな……」


口に出して――やってきたのは虚無感。

ミリアリアとトールの間に割って入れないことなど、分かりきっていることなのに……なぜこんな気持ちに襲われなくちゃいけないのか。



全てが堂々巡りする。

寝よう……寝てしまおう。
そうすれば、何も考えなくてすむ。
でも、またあの夢を――戦争の夢をみたら?
また自分は、頭を悩ませるのか?



つらい現実。あまくない夢の世界。

――夢が俺に、悪夢をくれる――



-end-

結びの一言
びみょ〜に恋心に気づいてないディアッカさんで。

お題配布元→ディアミリストに30のお題


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