「……華が無ぇ……」
格納庫に、ディアッカの声が響き渡った。











AAとクサナギ、同型艦この二隻には、決定的に違う点がある。
それは――女子の乗艦数。
クサナギにはあれほど女性が多いのに、AAにはなぜ女性クルーが二人しかいないのか。

周りをむさ苦しい野郎どもに囲まれたディアッカは、潤いの無さに嘆くしかなかった。



「元々、四人しかいなかったからな」
「内二人はアラスカで降りちまったし」
「そーか、四人だけだったのか」

残念そうにディアッカは呻く。
マリューとミリアリア以外の女性クルー……アラスカで降りているならディアッカとは面識が無さそうだが――悲しいかな、捕虜時代の記憶にしっかりと該当者がいた。

自分を殺そうとした赤い髪の少女と、尋問の際に会った軍人気質の女性。

「……あの二人ね」
笑顔だが――目は笑っていない。

あれなら遠慮してぇ……

ディアッカは本気でそう思っていた。
副長の方はとっつきにくそうな感じだし、赤い髪の方は、どう見ても好意的なものが見つからない。

見た目は美人系なのにもったいねー……とか、勝手に考える始末だ。

……元はミリアリアも――激昂してたとはいえ――ディアッカを殺そうとした一人。
そう考えると、彼の中で二人の扱いは大きく違う。

これは触れ合った差、だろうか。

片や、銃を向けただけのフレイ。
片や、話を聞いたり、食事を運んだりしたミリアリア。

フレイはあの事件の直後、半ば強制的に艦を降ろされたので、これは仕方ないことなのだが……



もし彼女が艦を降りず、今もAAに残っていたら、印象は大分変わっただろうか。



「綺麗な子だったよなー、あの子。ちょいとキツイとこあったけど」
「うんうん。なんてゆーか、華があった」

――華、ねえ……

確かに整った顔立ちをしていたが、ディアッカにはミリアリアの方が綺麗に思えた。

まあ……彼はフレイのキレ顔しか見ていないから、これまた仕方ない話である。



もし彼女がまだAAに乗っていたら、考えは大分変わっただろうか。



「……なんの話してるの?」

後ろに気配を感じて振り向くと、ミリアリアが立っていた。
不思議そうな彼女とは対照的に、話の輪を作っていた整備班達は、困ったように笑っている。
そんな中ディアッカは、ミリアリアに満面の笑みで答えた。

「ミリアリアがカワイイって話」
「――あんた、バカでしょ」

瞬間的に返ってくる言葉にすら、愛しさを感じる。



きっと結論は同じ。
もしフレイがまだAAに乗っていたとしても――愛しいと思うのは、きっとミリアリアだけだろう……と。


君だけが、僕の花――



-end-

結びの一言
最後の一言がお気に入り。
でもディアッカさんなのに『僕』なのが玉にキズ(汗)。

お題配布元→ディアミリストに30のお題

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