笑顔







あいつはいつもへらへら笑ってる。



「よお。暇人か?」
「なわけないでしょ」

格納庫に入って最初に交わした言葉は、こんなものだった。


――まったく……こっちは忙しい時間を削ってやってるのに。


腹が立って、じろりとにらんでやると――ディアッカはあの顔を見せた。

無性に苛立つ、余裕綽々の顔。

「……何よ」
「いやーぁ……じゃ、なんでまたCIC担当が、こんなむさ苦しい所に来るのかなー、て」
「用があるからに決まってるでしょ!」

これが見えないのか! と言わんばかりに、私は手に持っていた小さな箱をディアッカに押し付けた。

中に入っているのは、たくさんの工具達。

「備品の補充! ったく……ちゃんと渡したからね? 失くすんじゃないわよ?」
「失くすって……」

――んなわけないじゃん。

ディアッカが思わず飲み込んだ言葉は、手に取るように想像できた。

推測して……余計に腹が立つ。

でもディアッカは、そんな私に構うことなく、自分のペースを保ち続ける。
口笛なんぞを吹きながら、箱を開け、中身を確かめ……

「お! あったあった。これ待ってたんだよなー」

何やら小さなスパナらしきものを見つけ出すと、ディアッカは心底助かった――という顔をした。

そのあどけなさに、ぽかんとしてしまう。
こいつ……こんな顔もするんだ……

「さんきゅ」
「べ、別に……仕事、だし……」

私はとっさに、顔を背けてしまった。
ディアッカは……大して気にした様子も無く、くだらない世間話を始めている。



いつものへらへら笑ってる顔は嫌い。
なんだかバカにされてる様で、ほとほとムカつく。

でも今みたいに、やわらかい……素直な笑顔は……



……結構スキ、かも。




-end-

結びの一言
意地っ張りなようで、素直系ミリィさん。

お題配布元→ディアミリストに30のお題

*前次#
戻る0

- 7 /66-