電話越しに聞こえる声が繋ぐ、二人の絆。


――それは、聖なる夜の出来事――


空を、赤いサンタが駆け巡ります。
たくさんの子供たちへ、そして悲しみや苦しみを抱く住民たちへ、サンタはプレゼントと笑顔を届けます。
けれど、一人になると……
たった一人で次の目的地へと移動している間は、サンタの顔は曇ってしまいます。人々に向ける輝かしい笑顔が、どうしても持続されません。

赤いサンタが空を飛びます。大きな袋を背負い、屋根から屋根へと飛び移ります。
そんなサンタレッド=アスランの心は、今、一人の少女の存在で支配されていました。






【赤いサンタと暁の輝勇王】
―アスラン×カガリ―







〈……今は、駄目だ〉


息を切らせることなく飛び回り、屋根を移動すること十数回。サンタは茶色の屋根の上で足を止めました。
煙突があります。サンタは徐に足をかけると、そのまま中に入ってしまいました。
泥棒ではありません。彼はサンタです。サンタにとっての「玄関」は「煙突」なのです。

家の中では、小さな男の子が目を輝かせて待っていました。
憧れのサンタからプレゼントを受け取ると、少年はもっと喜びました。
サンタも笑います。
「メリークリスマス」と笑います。
けどその笑顔も、家を出た瞬間消えてしまいました。



〈だから、今は駄目なんだ〉




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