電話越しに聞こえる声が繋ぐ、二人の絆。 ――それは、聖なる夜の出来事―― 空を、赤いサンタが駆け巡ります。 たくさんの子供たちへ、そして悲しみや苦しみを抱く住民たちへ、サンタはプレゼントと笑顔を届けます。 けれど、一人になると…… たった一人で次の目的地へと移動している間は、サンタの顔は曇ってしまいます。人々に向ける輝かしい笑顔が、どうしても持続されません。 赤いサンタが空を飛びます。大きな袋を背負い、屋根から屋根へと飛び移ります。 そんなサンタレッド=アスランの心は、今、一人の少女の存在で支配されていました。 【赤いサンタと暁の輝勇王】 ―アスラン×カガリ― 〈……今は、駄目だ〉 息を切らせることなく飛び回り、屋根を移動すること十数回。サンタは茶色の屋根の上で足を止めました。 煙突があります。サンタは徐に足をかけると、そのまま中に入ってしまいました。 泥棒ではありません。彼はサンタです。サンタにとっての「玄関」は「煙突」なのです。 家の中では、小さな男の子が目を輝かせて待っていました。 憧れのサンタからプレゼントを受け取ると、少年はもっと喜びました。 サンタも笑います。 「メリークリスマス」と笑います。 けどその笑顔も、家を出た瞬間消えてしまいました。 〈だから、今は駄目なんだ〉 |戻る0| -5/73- |