ラクスの「影武者」ミーアに、ハイネがキツく当たるのは。


「しっかし、おかしな女だな」
「何がおかしいって言うの?」

聖なる夜、ミーアはオーブ官邸にいました。今日は官邸で祝賀会が行われるのですが、来賓として呼ばれたラクスが体調不良で出歩けないため、急遽ミーアが『ラクス・クライン』として祝賀会に出席することになったのです。

「趣味がおかしいって言ってんの」
「ちょっと! この衣装、ラクス様が愛用してる礼服よ?! それを馬鹿にするの?!」
「服じゃない、服じゃない」

『ラクス・クライン』の控え室で用意をしているミーアにいちゃもんを付けているのは、ハイネという名の若者でした。彼はこれでも、カガリ・ユラ・アスハの専任執務官です。
ハイネは彼女が『ラクス』ではなく『ミーア』であることを知っています。本当は教える予定は無かったのですが、彼が『ラクス』を迎えに行った際、偶然二人が一緒にいる所を目撃してしまい、事情を説明して口裏を合わせさせたのでした。

「よくやるぜ、歌姫の代役なんて」
「良いじゃない。私がいるおかげで、祝賀会への来賓が一人、キャンセルかからなくて済んだんだから」

敵意のある者に、ミーアは容赦しません。自分がラクスではないと分かっている者には、直のことです。
そしてハイネは、決定的なことを言いました。

「ラクス・クラインの影武者ってったって、いつかは用済みになって、ポイ捨てされるだけじゃねーの?」
「〜〜ったにそんなこと言われる筋合い無いわよ!!」

ハイネの暴言に、たまらずミーアは部屋を飛び出すのでした。






【秘密のサンタと偽りの宝石】
―ミーア×ハイネ―







「あの男あの男あの男―――――ッ!!」


どごっ。


VIP待遇の来賓控え室前とあって、廊下に人気は皆無でした。それを良いことに、ミーアはその怒りを、壁に拳でぶつけます。
鈍い音が響きました。ぶつけすぎたかもしれません。
でも、それだけ悔しかったのです。



――用済みになってポイ捨て――



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