緑のサンタ、恋人に自分の正体を明かせなくて…


もうすぐクリスマス――そんな夜、とある二つの家の中で、電話回線を通じて話し合う恋人たちがいました。
笑い合っています。とても楽しそうです。
ですが、

「ねえねえ、クリスマスどうする?」
「――クリスマス?」
「そう、クリスマス」

女が他愛無く出した話題に、男の顔が引きつりました。
恋人達のイベント日にもなっているクリスマスですが、この聖なる夜、男には外せない大切な用事がありました。
クリスマスは一緒に過ごせない、と話すのを、すっかり忘れていました。
男の顔が青く染まっていきます。真っ青です。血の気が通っていません。

「あーと、えーーーと……その、今年の、クリスマスは、ちょっと……」
「駄目なのね? 今年も」

女の言葉が、男の胸にぐっさりと刺さります。
彼女の言う通り、二人は去年のクリスマスも一緒に過ごしませんでした。
男には、どうしても過ごせない理由があったからです。

「去年は、お爺ちゃんが危篤になって、急遽駄目ってなったわよね」
「う。けど、あれは――」

――仕方ないじゃないか。
そう繋げようとしましたが、


「次の日、あんたのお爺ちゃんが犬の散歩してるの見かけたんだけど」


先手を打たれてしまいました。
時が止まります。
事情があって『用事』の内容を伝えられず、男は嘘をついたのですが。
思いっきりバレていました。

「で? 今年はどうして駄目なの?」
「………………イザークが、危篤」

男は、そんな嘘をつくことしか出来ませんでした。






【緑のサンタと悠久の恋華】
―ディアッカ×ミリアリア―




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