白いサンタを名指しで、「手紙」が届きました。


それは、人々が『聖なる日』と称する夜の出来事でした。
一人の少女が、窓辺に顔を出していました。彼女はつまらなそうに、月明かりが包む町並みを見ています。
少々考え事をしながら、ボーっと目を曇らせ……しかし、ある一瞬、突然彼女の目は大きく見開かれました。
空に、人影が見えます。それは、白い服を着たサンタでした。
身を乗り出し、彼女はサンタを追いかけます。


「……見つけた……」


それまで生気の無かった表情が、生き生きとしはじめました。
[シホ]という名の少女が、[願い]を見つけた瞬間でした。






【白いサンタと凛然の乙女】
―イザーク×シホ―







それから一年が経ちました。今年もまた聖なる日を迎え、サンタ事務局は大忙しです。
サンタdaファイブの中で、一番最初に準備を始めたのはイザークでした。白い帽子と白い制服を着込み、あとはプレゼントを入れた袋さえ担いでしまえば、サンタホワイトに変身完了です。
そんな彼に、桃色の髪を揺らしながら、歌姫が歩み寄りました。

「また重そうなのばっかりねー……肩凝りそう」
「ならもっと身体にやさしい入れ物を用意しろ」

正確には、歌姫の影武者を勤めるミーアが茶化すように話しかけました。
イザークは出勤直前の忙しい時間のため、彼女を邪険に扱います。けど、ミーアは大して気にしていません。ぽん、とイザークの肩に手を置いて、見上げます。

「ねえ、あんたの仕事、増やして良い?」
「なんだと?」

ふざけるな――睨みつけようとしたイザークでしたが、その瞳はミーアを捉えられません。代わりに、何枚もの葉書の束が、彼の視界に飛び込みます。

「……何だ、これは」
「簡単に言っちゃえば、あんたへのラブレター」
「なんだ、くだらない……」


ミーアを押しのけ、イザークは仕事準備に戻ります。けど、ミーアも語り続けます。

「本来はこういう『サンタ個人へのファンレター』は取り扱わない規定になってるし、最初は放っておいた方が良いと思ったんだけどね、調べてみたら、ちょっと事情が事情って言うか……こんだけ熱心に葉書を出してるんだし、見捨てるのも可哀想って言うか……」
「〜〜はっきり言え! 貴様は俺に、何をさせたいんだ!!」

最終的に、イザークの怒髪天が炸裂しました。
それでもミーアは気にしません。怯むことなく、言ってのけます。



「この子に、会いに行ってみない?」


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